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素顔

戦闘不能のシャドウと回復要員セッツァーのお話。魔法に関しての独自解釈あるので注意


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ファルコン号の丸窓から外を眺める。雲の流れに変化は無い。燦々と降り注ぐ太陽の光は、地上の鬱蒼とした雰囲気とはまるで違う。少し視線を落として奇妙な形に広がる森を見る。確か、フィガロの双子とカイエン、それから巻き添えを食らったシャドウがブラキオレイドスの討伐に向かっているのだ。暑い中よくやるものだ。

俺、セッツァー・ギャッビアーニはさすらいのギャンブラーだ。・・・とは言うが。いざ仲間になって魔石集めが始まると、俺は率先して回復系の魔法を覚えさせられた。特に意味はないらしいが、完璧に俺のスロットを期待していなことが見え見えだ。その時は流石に泣いたが、俺のために魔力の消費を抑えてくれるという『スリースターズ』を手に入れると言われてからは、このままでもいいかなと思うようになった。人間前向きが一番だ。

と、床をバタバタと走る音が響いて俺は部屋から顔を出した。かなりの人数だ。下手すると床が抜けるから走るときは気を遣えって言ってるだろうに。そう思っていると、まず最初にマッシュが視界に入った。何かを背負っている。黒い。シャドウだ。・・・シャドウ?

「おい、どうした?」
「うっかりアルテマ食らっちゃって・・・」

見るとカイエンはエドガーを背負っている。・・・そういえば、シャドウとエドガーはレベル上げも兼ねていたのだったか。どういうわけか女性陣よりレベルが下ということが発覚してから、彼ら二人はよく連れ回される。そして時たま、戦闘不能になってファルコンに運び込まれる。懲りない奴らだ。

「兄貴は後で文句言いそうだから、ティナに任せてくるよ。セッツァーはシャドウを回復させてくれないか?」
「ああ、わかった」

申し訳無さそうに言うマッシュに頷いて応える。取り敢えず部屋に入って備え付けのベッドに寝かし、(無論ここまではマッシュに頼んだ。戦闘ができるのとパワーがあるのとはまた別である)レイズを唱えた。アスピルをした方が早いが、アスピルはかけた俺とかけた相手どちらにも程々の負担がある。余裕がない戦闘時ならまだしも、そこまで急いて治療する必要はない。

いくらか顔色が戻ったシャドウと同時に、一度は止まった血がまた溢れ出す。失血死する前にケアルを唱えて止血した。傷はまだ残っている。よく見ると覆面の当たりが血まみれだ。アルテマで戦闘不能になる前にティラノサウルスから噛み付くでも受けたのだろうか。噛み跡が残っている。

「・・・悪く思うなよ」

一言呟いてからシャドウの覆面を取った。驚く程ときめきがない。これがスタイルグンバツの美女ならまだ良かったのに。しかし、普段食事を食べるときでさえ誰にも見られないように隠れる男の素顔は気になった。結局ただの好奇心だ。

止血したとはいえ、やや血色の悪い顔が現れた。面立ちはまあ端正と言えるだろう。顎が細く鼻が高い。形の整った細い眉は苦しげに顰められている。よく見れば睫毛がやたらと長い。エドガーかよ。唇は薄く、幅はさほど無い。しかし年齢が推し量れない。童顔気味の30代か老け顔の20代前半。このどちらかだろう。

そこまで考えて男の顔面をまじまじと眺めている自分に嫌気が差した。偏見はないが俺自身にそんな趣味は無い。

「血はただの返り血か、向こうで回復したか、どっちかかな」

さっさと終わらそ、と呟いた。



何度か瞬きをして、鼻のあたりまで覆っているはずの覆面が無いことに気づく。目を見開いて思い切り起き上がると、足を組んで肘を膝に置き、面倒臭いのか不機嫌なのかわからない表情で座るセッツァーがいた。

「おはよう」
「・・・覆面は」
「起きて早々それかよ。ほら」

投げて渡されたのは確かにいつも見覚えのあるソレだ。なんとも言えない表情で受け取ると、セッツァーが深く息を吐いた。

「誰も部屋に入れてねえよ。見たのは俺だけだから気にすんな」
「・・・」
「あと、お前の相棒が部屋の外で待ってるぜ」

じゃあな、と席を立つセッツァーを無言で見送った。
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プロフィール

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オインゴが嫁でシャドウが愛人です

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