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シャドウがルイズにry

ティナちゃんで懲りずにシャドウ。感傷的なシャドウ+割と感情丸出しなので注意。ED後
見事に月1の更新になっていますが私は元気です

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地響きのような音を立てながら崩れていく塔の中で、男は何をするでもなくぼんやりと腰を下ろしていた。ケフカは死んだ。ファルコンが自分以外の全員を回収し終えただろう。魔法という力が失われ、世界はこれから平和になる。そこに自分の姿は必要無い。シャドウは目蓋を落とした。

自分勝手で、独りよがりな考えだということはわかっていた。捨てられた娘がどう思うかなんて手に取るように分かっていたのに、行動に移して悲しい思いをさせたのは事実だ。元々、親友の件で深く傷ついていたのが妻に先立たれて悪化したのだ。――あの時俺はなんと思ったことか!もしかしたらこの手で娘を殺してしまうかもしれないだなんてなんてくだらない!

そう思いつつも、シャドウはくだらないとは微塵も考えていなかった。殺しをして飯を食っていたような人間だ。無意識のうちに娘を殺してしまうかもしれないとは、妻が身篭ったと嬉しそうに告げた時から持っていた考えだったのだ。それを一度だって口にしなかったのは懸命だったかもしれない。妻を殺しかける事も、実のところ何度かあった。子供は嫌いではなかったが、いつか娘をもこの手にかけるかもしれないと思うと恐ろしくてたまらなかった。

村を出ようと思ったのは、妻が風邪をこじらせて亡くなってからだ。そこまで体が弱いわけでもなかったのに、彼女はみるみるうちに弱って息を引き取った。あの白く細い首を見て、絞めればぽっきり折れてしまうに違いないと考えたのは、誰だ。

重く息を吐くシャドウは、閉じた目蓋に腕を押し付けた。悲観的に考えてしまうのは一種の癖のようなもので、同時に自分に甘い考えを恥じた。何を考えても妻と娘のことばかり浮かぶ。インターセプターのことはそこまで気がかりではない。人間にして老人と言える年齢になっても現役だった彼は、娘と育て親の老人がなんとかしてくれるだろう。戦いはもうないのだから、彼も静かにできる。

地響きが一層酷くなり、いよいよか、とシャドウは思った。これまで上手いこと瓦礫が自分を避けたミラクルはもう続かない。そうだろう、と口中で呟く。ふとシャドウが目を開くと、目前に巨大な鏡があった。縦幅は2m、横幅は1mくらいの楕円形で、厚みは思っていたほどない。落ちてきたのか?それにしては随分損傷が少ない――シャドウがそう思って鏡に手を伸ばした時。

ボーーーッと、列車の汽笛が辺り一帯に鳴り響く。らしくもなく音にびくついたシャドウは、『鏡の中へ入って』しまった。



ハッと目を見開き起き上がると、視界いっぱいに煙が立ち込めていた。火薬に似た匂いがする。ここはどこだ?シャドウは忍者刀の柄を握った。周囲に人間の気配がありすぎる。囲まれているらしい。少しずつ白煙が消えていく。シャドウの目前に一つの小さな人影がある。
 
「な、…なん、なのよ」

けほ、と控えめに咳をするのは、娘と同じくらいの背の丈の少女だった。釣り上がった鳶色の瞳とあまり見かけないピンクブロンドの長髪。年齢は12、3歳ほどか。手に杖のような物を持っているが、何に使うのだろうか。少女は黒地のローブに白いワイシャツ、黒いプリーツスカートに黒い革靴を履いている。どう見ても運動向きではない。縫い目が綺麗だし、布が上質だ。裕福な家の娘か、下手すれば貴族の令嬢なのかもしれない。シャドウが冷静に分析する中で、少女が「あ、ああ、あんた、誰よ!」と喚いていたが、シャドウは無視した。

少し辺りを見渡すと、豊かな草原と美しい青空をバックにそびえ立つ石造りの城が見えた。少女と同じような格好をした子供達が、シャドウを見てヒソヒソと何やら喋っている。

「モンスターじゃないぞ、人間だ!」
「なんだ?あの格好…」
「マントを持っていないし杖もない」
「平民だ」
「ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」
「変な覆面ね」
「ルイズ、『サモン・サーヴァント」で平民を呼び出してどうするのよ!」
 
――どれも聞きなれない単語だ。召喚とは、どういうことだろうか。召喚魔法なら知っている(魔石から幻獣を召喚する際に何度か使った)が、もしや手違いで自分が召喚されたのか?あの時の奇妙な鏡が関係しているのかもしれない。シャドウは片眉を上げた。厄介なことになったらしい。

「ミスタ・コルベール!もう一度召喚させてください!」
「それは駄目だ、ミス・ヴァリエール」
 
頭(かぶり)を振ったのは子供達ばかりがいる中で一際目立つ中年の男だった。やはり黒いローブに杖を持っている。その姿は、あの剽軽(ひょうきん)な青魔道士を思い出させた。…魔道士か?シャドウは眉根を寄せた。魔法はなくなったはずだ。

「アンタが保護者か?」――そう問いかけようとしたが、やめた。二人の会話を黙って見つめる。

「なぜですか!」
「決まりだよ。二年生に進級する際、君たちは『使い魔』を召喚する。今、やっている通りだ」

『二年生』だと?

シャドウは元々寄せられた眉間の縦皺を更に深めた。謎が一気に解けた。ここは学校なのだ。それもかなり金がかかり、所謂貴族の子供ばかりが集まる。上質な制服が普及している時点で格が違う。それはまあ、いいだろう。問題なのは学校で『何を教えているか』だ。…シャドウは既に、『別の可能性』を考え始めていた。

「それによって現れた『使い魔』で、今後の属性を固定し、それにより専門課程へと進むんだ。一度呼び出した『使い魔』は変更することはできない。何故なら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。好むと好まざるに関わらず、彼を使い魔にするしかない」
「でも!平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」

ものの例えで貴族と称したが、あながち間違っていないのかもしれないとシャドウは思った。少女の言葉に周囲の子供たちからどっと笑いが巻き起こる。太陽の陽が鬱陶しかった。

「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。例外は認められない。彼は…」

中年の男がシャドウを一瞥する。

「ただの平民かもしれないが、呼び出された以上、君の使い魔にならなければならない。古今東西、人を使い魔にした例はないが、春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する。彼には君の使い魔になってもらはなくてはな」

あやゆるルールに優先する前に、人権を優先しろ、とシャドウは思ったが、思ったままで口には出さなかった。がっくりと肩を落とす少女に、中年の男が「儀式の続きを」と急かす。

「えー…この変な格好の彼と?」

余計なお世話だ。

「そうだ。早く。次の授業が始まってしまうじゃないか。君は召喚にどれだけ時間をかけたと思ってるんだね?何回も何回も失敗して、やっと呼び出せたんだ。いいから早く契約したまえ」

そうだそうだと野次が飛ぶ。少女は困ったようにシャドウを見る。シャドウもまた、少女をギロりと睨む。否、ただ見遣っただけなのだが、元来目付きの悪いシャドウから見られれば睨まれたと勘違いするのも仕方がなかった。少女は眉を吊り上げ、怒ったような表情のままシャドウの口元(であろう場所)に人差し指を突きつけた。

「それ、取って」

覆面の事を言っているのだろう。シャドウは冷やかに言った。

「断る」
  




続かないよ!!!
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プロフィール

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ヨーカ
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自己紹介:
オインゴが嫁でシャドウが愛人です

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