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香水2

これ」の続き。エドシャド(♀)。女体化注意。セリス視点

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瓦礫の塔から脱出後飛空艇の飛行が落ち着いた頃、エドガーに呼ばれた私は内心で首を傾げていた。手当だけならエドガーでも出来るはずだし、やるならガサツな私よりも彼の双子の弟であるマッシュに頼んだ方が早く済む。きっと丁寧に行なってくれるだろう。魔法が使えない今、私は剣の扱いが上手いただの女だ。



「ティナに頼もうとも思ったんだが、考え事をしているようでね。リルムは少し怯えている風だし」

「・・・なら、マッシュとかの方が上手くやるんじゃない?私は、その・・・」



言葉が尻すぼみになる。それをエドガーがどう受け取ったかは私にはわからなかったが、彼はなぜか困ったような戸惑っているような、複雑な表情を浮かべた。それから曖昧に笑みを浮かべ、シャドウがいるらしい部屋の扉を開けた。



最初に目に入ったのは、主人を守るように座る老犬の姿。その次に、静かにベッドの上で横たわる黒衣の。ーー思っていたイメージと違い、私は「え?」と声を漏らしてしまった。覆面を外したその面立ちは、壮年の『女性』だ。女顔、というには苦しい柔らかい輪郭と、血の気の引いた青白い肌が何処か危うい雰囲気を醸し出している。腹部にある負傷が生々しい。



「・・・さすがに、私がやるわけにもいかないと思ってね」

「・・・紳士ね。わかったわ、任せて」



私は顔の筋肉を引き締めて、こっくり頷いた。エドガーはホッとしたように頷き返した。







薬箱を開けてポーションを加工した軟膏と、消毒液を取り出す。少し前まで魔法で治していたのであまり量はない。それでも存在するだけマシと思いつつ、シャドウの服を脱がしにかかる。生地を触ると、思ったよりもツルツルしておらず、ジーンズのように硬い素材だった。道理で中々破れないはずだと納得する。と、胸の辺りを触ったとき、明らかに肌ではない硬い物があった。



「・・・なるほど」



こうして体型を誤魔化していたわけか、と呟く。それは、例えるなら薄手の胸当てだった。叩くと反響する。胸当てを外すとさらしできつく巻かれた肌が見える。怪我は腹部だし、同性とはいえそこまで触るつもりはないので放っておく。



「あら?」



ふと、手に何か握り込んでいるのに気づいた。それと同時に花の香りが鼻腔を掠める。手を広げて見てみようかとも思ったが、拳を作っているだけかもしれない。しかし、この握り方なら何か小さな物を持っていてもおかしくない。・・・数秒考えて、いじるのはやめた。それがシャドウにとって大切なものなら、関係ない私が勝手に触るのは気分が悪いだろう。



気を取り直して綺麗なハンカチに消毒液を吸わせ、傷口に当てる。くぐもった小さな唸り声が聞こえたが、目は覚めないらしい。ついでに飛び散った血も拭い、ガーゼに軟膏をのばして貼付する。その上から包帯を巻き、巻き終わりをテープで留めた。



一つ息を吐いてシャドウの顔色を伺う。あまり変わりはないし、気のせいかもしれないが、少々血色が戻ったように見えた。



(・・・綺麗ね)



心の中で呟く。彫りが深く憂いを含んだ面立ちは、あと10歳若ければさぞ美人だなんだと持て囃されたに違いない。いや、若くなくても、熟成された大人びた雰囲気は世の男共を射止めるだろう。純粋に、覆面で隠すのは勿体無いと思った。態々隠すのだから、何か理由があるに違いないのだが、如何せんそういう事には疎いため、皆目検討がつかない。



暫く何もせずぼうっと椅子に座ってシャドウの顔を眺めていた。インターセプターの視線を感じたが、気づかないふりをしていた。



コンコン、と突然扉がノックされる音がして、どきっとする。



「エドガーだが、入ってもいいだろうか」



普段と変わらない爽やかな声色に、私はシャドウの体にブランケットを被せてやってから「どうぞ」と声をかけた。控えめに開かれる扉と共に革靴が音を立てる。顔を上げて見てみると、扉の向こうから聞こえた声色とは裏腹に、いつもは自信に満ちた顔が不安を帯びていた。



「手当は、終わったのかい?」

「えぇ。元々対した怪我じゃないし、そのうち目が覚めると思うわ」

「そうか・・・」



口元は笑みを作っていたが、何処かそわそわと落ち着きがない。どうしたの?と聞いてみると、エドガーは暫く言いよどんでいたが、やがてボソボソと話し始めた。



「・・・・・・今まで、何も気付けなかったと思ってな」



苦虫を噛み潰したような顔だ。



「女性を守れなかった」

「シャドウは女扱いされたくなかったのかもしれないわ」



言いながら胸当てを人差し指で叩く。エドガーはそれを見て腑に落ちたように言った。



「それで体型を誤魔化していたのか」

「全身黒服だったから余計にね。声もハスキーだし、気付かないのも仕方ないわ」



慰めるようにエドガーを見上げたがしかし、エドガーは険しい表情を作ってシャドウの顔を見つめる。私は居た堪れなくなって、席を立った。



「このこと、みんなに伝えた方がいいかしら」

「・・・そうだな。頼んでもいいか」

「えぇ」



どうやらシャドウの傍を離れるつもりはないらしい。インターセプターに手を振って部屋を出た。







私が甲板に出ると、ほとんどの人が地上を眺めながら談笑していた。一番近くにいたゴゴが「手当は終わったのか」と尋ねてくる。自発的に喋るタイプではないと思っていたので、少し驚きつつも頷く。それから、私は声を張り上げて「話があるの。聞いてくれないかしら」と言った。



全員が振り向いて――操縦をしているセッツァーはこちらを一瞥し――各々が口々に反応する。



「シャドウの手当は終わったの?」

「それはもう大丈夫。大きな怪我じゃないから」



リルムの言葉に返事を返してやり、私は一つ深呼吸をして言った。



「シャドウね、」



――たくさんの息を飲む気配を肌で感じた。
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プロフィール

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女性
自己紹介:
オインゴが嫁でシャドウが愛人です

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