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ティナちゃんが召喚されたようです

ゼ.ロ.の.使.い.魔×FF6。ティナちゃんがルイズに召喚されました


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サモン・サーヴァントとは、所謂「コモンマジック」と呼ばれる簡単な呪文に含まれる。メイジと呼ばれる魔法使いには、それぞれ4つ、あるいは5つの系統に分かれるが、このコモンマジックはメイジの系統に関係なく使用することができる。

今日、このトリステイン魔法学院の2年生たちは、サモン・サーバント――召喚の儀式を行っていた。使い魔を召喚するのだ。おそらく、自身の半生を共にするであろう相棒である。簡単な呪文だ、失敗する者は中々いないのだが、彼女だけは違った。

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール・・・よほど律儀な者でなければ覚えきれない名前を持つ少女、通称ルイズは、何度目かわからない詠唱を失敗した。特徴的なストロベリーブロンドが、爆風に煽られ彼女の頬を嬲る。穏やかな鳶色の双眸は、悔しさと哀しみに潤んでいる。既に召喚を終えた生徒たちが、失敗し続けるルイズに指を指したが、ルイズは無視した。

「お願い――出てきて、私の使い魔ッ!」

爆発が起きた。これまでよりも大きなものだ。薄灰色の煙が立ち上り、強い爆風がルイズの体を嬲る。煙が晴れ、大きなクレーターの真ん中には――

女がいた。ルイズよりも年上だと、身長や体の発育からわかる。癖のあるアッシュブロンドを高い位置で縛り、抜けるように白い肌を惜しみなく晒した露出の高いワンピースを着ている。だがそこに下品さは感じず、幸の薄そうな面立ちからは耽美という言葉を体現したかのように儚い雰囲気を醸し出していた。

「おい、ルイズのやつ・・・」
「平民を召喚したぞ」
「マントをつけてるけど、杖は持ってない」
「平民だ」
「平民だ」
「平民だ」
「さすがゼロのルイズだな」

ルイズは泣き出しそうになった。

「ミスタ・コルベール!もう一度召喚させてください!」

眠ったまま目覚めない女をそのままに、ルイズはこの場を取り仕切る教師、禿げ上がった頭が特徴的な男に声をかけた。コルベールは静かに首を横に振る。却下の言葉に顔を項垂れた。

「・・・」

わかってはいたのだ。頭では理解している。召喚の儀式は神聖なもの。それにやり直しを求めるのは論外だ。好みで変えられるものではない。しかしルイズは――ルイズは、納得がいかなかった。悔しかった。同級生はあんなに立派なモンスターを召喚したのに、自分はただの平民。その言葉の羅列には屈辱しか感じない。

腹を、括るしかないのだ。

ルイズは瞼を閉じて深呼吸を繰り返した。深く空いたクレーターの中に降り、女の近くにまで寄る。なるほど、中々の美女だ。同じように貴族で年上のメイジなら、慕って後ろをついて歩いたかもしれない――普段のルイズなら考えられないことを思いながら、ルイズは詠唱を終え女の薄い唇にキスを落とした。

「うっ!うぅ・・・」

女は左手を抑えて身を捩らせた。使い魔のルーンが刻まれているのだ。やがて女の唸り声が止み、ルーンも完全に刻まれた。コルベールがクレーターの近くまで歩いてくる。

「・・・ここは・・・」

掠れた声にルイズは目を見開いた。女が目を覚ましたのだ。

「ここは・・・どこ・・・?」

もう一度言葉を発したとき、声は滑らかになっていた。鈴を鳴らすような綺麗な声だ。ルイズは聞き惚れた自分に気づき頬を赤らめさせながら言った。

「ここはトリステイン魔法学院よ。あなたは使い魔として召喚されたの」
「魔法・・・わから、ない・・・何も・・・思い出せない・・・」
「え?」

「ミス・ヴァリエール、コントラクト・サーヴァントは成功したみたいだね」

頭上から降ってきた穏やかな声色にルイズは女の放った言葉の意味も飲み込まず顔を上げた。

「どれ、登ってくるのは大変だろう」

言いながらコルベールは杖を振ってルイズと女を地上に下ろした。女はどこか眠そうに、ルーンが刻まれた左手をさすっている。

「申し訳ないが、ルーンを見せてくれませんか」
「・・・ここはどこ?・・・私は・・・何者なの?何も・・・思い出せないわ・・・」

女は緩慢に首を振りながら言った。その言葉を聞いた生徒たちが騒めく。

「おい、記憶喪失だぞ」
「もしかしたら平民じゃなくてメイジかも・・・」
「どうすんだよゼロのやつ」

それを口で黙らせながら、コルベールが腰をかがめて女に優しく声をかける。

「名前もわかりませんか?」
「名前・・・ティナ・・・」
「名字はどうでしょうか」
「・・・わからない・・・」

女は悩ましげに目を伏せた。その儚い仕草に男子生徒が見惚れる。女子生徒が面白くなさそうに眉根を寄せた。ルイズが不安げにコルベールの顔を伺う。

「あの・・・ミスタ・コルベール」
「ああいや、ふむ・・・そうか。人間が召喚されるというのは稀だから、その時に何か衝撃が起こって記憶が飛んでしまったのかもしれない。ティナさん、どこか悪いところはありませんか?」
「わるい?」
「どこか体に痛いところはない?って聞いてるの」

ルイズはティナの隣に腰をかがめ、彼女では考えられないほど優しい声音で言った。全く似ていないのに、ティナの姿が彼女の愛する病弱な姉と重なったのだ。ティナはルイズを見上げて「・・・何もないわ」と囁くように言った。

「私・・・あなたに召喚されたの?」
「え?」
「さっき言っていたわ。この文字はなに?あなたの名前は何?」

矢継ぎ早に飛ぶ質問に、しかしルイズは悪い気はしなかった。ティナのその面立ちに反した、どこか幼児性を感じる言葉遣いに、ルイズはお姉さんな気分になったのだ。

「私があなたを召喚したの。その文字は使い魔のルーン。あなたは私の使い魔になったの。それで・・・私の名前はルイズよ。よろしくね、ティナ」
「ルイズ・・・使い魔・・・そう、よろしくね」

平民を召喚したにも関わらず、ルイズは晴れ晴れした気分になった。
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