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口紅

テレオイ。化粧するテレンスと化粧されるオインゴ。短い

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「目、瞑ってください」

言われるがままに瞼を落とす。瞼の上に毛のような柔らかいものが触れるのを感じながら、意外と冷静な自分に呆れた。目の下にもそれが当てられる。ファンデーションや化粧水で整えられた顔面は、様々なものが塗りたくられたせいで自分のものではないようだ。ーー変身能力を持つ俺が言うのもおかしな話だが。

「開けていいですよ。・・・うん、やはり私の思ったとおりです」
「執事さんよォ、こういうのはやっぱマライアとかに頼んだ方がいいと思うぜ」
「今更何を言いますか」

もっともな話でグウの音も出ない。執事は細々とした何かを取り出して言った。

「リップ塗るんで唇出してください」

抗議しようかとも考えたが、あまり逆らうとこの男は後が怖い。大人しく唇を突き出す。まるで拗ねているかのような格好に気恥かしさを感じていると、唇に何かを押し当てられた。わかっていたはずなのに肩が跳ねる。執事が不満げに言った。

「動かないでくださいよ」
「塗る前になんか言えよ」
「うっさいですね」

他人の顔を使って女物の化粧品を塗りたくっているやつが何を言う、と思いながら鉛筆のような形のそれを散々ベタベタと当てられ、漸く離れてこれで終わりかと思えば別のリップが現れ眉を潜めた。

「まだ塗るのかよ」
「これで完成ですから」

人形の仕上げでもしているかのような物言いだ。いや、実際そういう気分なのかもしれない。複座立つだ。リップスティックは鮮やかな赤だ。少し濃いんじゃないか、と言うと、あなたには濃い色が似合うんですよと返される。丸い円を描くようにリップが塗られる。顎に添えられた手がくすぐったい。きゅぽ、とリップの蓋が閉められる音がした。執事はどこか恍惚とした表情を浮かべながら、俺の手を取る。

「・・・化粧は不似合いな方がちょうどいい」
「似合わねーと思うならやるな」
「私好みの顔なんですよ」

せっかくですから髪もいじりましょうか。そう言って執事は笑みを深めた。

 

 

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プロフィール

HN:
ヨーカ
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性別:
女性
自己紹介:
オインゴが嫁でシャドウが愛人です

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