パンケーキ
料理音痴シャドウもいいけど料理上手シャドウも良いと思うんですね
程よい焦げ目のパンケーキ。厚みは3センチ程はあるだろうか、乗せられたマーガリンが熱に溶けてとろりとしており、半透明のシロップと混ざりあっている。ナイフを差し入ればしっとりとした弾力がナイフを握る手に伝わった。フォークを差して口に入れる。しつこすぎない甘味。ふわふわした生地。マーガリンと甘い匂いが鼻を抜ける。
「美味しい!」
私は素直に感想を告げた。他のみんなもそれには同感なのか、同意するように頷く。マッシュが言った。
「ティナの言うとおりだぜ。料理について手も口も出さねえから、できねえもんだと思ってた」
言いながら黙って足を組んで座る黒装束の彼、シャドウに目を向ける。シャドウの目の前には彼の分のパンケーキが手付かずのまま置かれていた。食べないのだろうか。思いながらパンケーキを口に運ぶ。美味しい。
「しっかし、このナリでこんなファンシーなモン作るとはな」
セッツァーは言いつつも、味についての文句はないらしい。食べ進めるスピードは変わらない。
「ね、ねえ、シャドウ」
珍しくリルムが上目遣いに言った。いつもはすまして大人っぽく振舞っている彼女が、子供のようにはしゃいでいるように私は見えた。
「これ、このパンケーキね、リルムの好きなパンケーキの味とそっくりなの。どうやって作ったの?コツとかあるのよね?教えてよ」
「・・・普通に作っただけだ」
これまた珍しく、シャドウは困っているようだった。声音に後悔の色が含まれている。
「とは言っても、普通に作ってはここまで生地は膨らまないんじゃないかゾイ。コツは無いつもりでも、リルムが作るのとはまた違うのかもしれないゾイ」
「そうよ、そうよ!ねえ、レシピ書いて!できれば作り方見せてくれると・・・いいんだけど、なあ」
ストラゴスの擁護に乗っかるように勢いづいたリルムは尻すぼみにそう言った。ロックが行儀悪くフォークを歯で噛む。
「レイチェルのと作り方似てるかも。こんな感じのパンケーキを、よく作ってくれたよ」
「・・・へえ」
行儀の悪さを注意しようとしたセリスが、いつもより低いトーンで相槌をうった。
「あっ、いや、別にセリスの料理が駄目ってことじゃ!」
「誰もそんなこと言ってないわよ」
鋭く突っ込むセリスの言葉にロックが肩をすくめる。そんな二人を無視してエドガーが囃し立てた。
「教えてあげなよ、レディの頼みは迅速に応えるべきだぞシャドウ」
「・・・今度」
そんなエドガーの言葉に諦めたのか、元よりそのつもりだったのか、重く息を吐いてシャドウは言葉を続けた。
「日が空いたら教えてやる」
「・・・!」
リルムの顔色がパッと明るくなった。その表情はとても生き生きしている。モブリズの子供達を思い出して口角が緩んだ。いつもこんな顔をしていればいいのに、本当に可愛い。私は隣でガツガツとパンケーキを食べるガウの方を向いた。頬にカスがついていたので取ってやる。
「ガウガウ!ティナ、ありがとー!」
「どういたしまして。モグ、美味しい?」
「クポー!美味しいクポー!」
右隣にガウ。左隣にモグ。正面にリルム。ああ、本当にみんな可愛いわ。私は上機嫌にパンケーキを切り、口に運ぶ。
「・・・何故かわからんが、拙者寒気が・・・」
「・・・」
「ウー」
カイエンがよくわからないことを言った。そういえばすっかり見逃していたけど、ゴゴはどうやって食べたのかしら。皿の上は空っぽになっている。ウーマロはニコニコしながらお上品にフォークをパンケーキに突き刺していた。私がちゃんと教え込んだ事をきちんと実行してくれてるのね、偉い偉い。
「そういえばシャドウ、貴方は食べないの?」
リルムと言葉少なにやり取りしていたところにそう尋ねると、みんなも同じことを思っていたのかシャドウの方を向いた。
「・・・後で食う」
「暖かい内に食べた方がいいんじゃない?」
やはり火の通した料理は暖かい内に食べた方が良いだろう。そう思って言うと、何故かエドガーやセッツァーがニヤニヤとそれに同意した。
「そうだぞシャドウ、その覆面を取ってパンケーキを食べるんだ」
「大丈夫だぜシャドウ、どんなブ男でも俺たちは笑ったりしねえ」
何の話をしているんだろう。
「・・・」
それに対してシャドウはやはり沈黙を貫く。私は最後の一欠けらを口に運んだ。やっぱり美味しい。
程よい焦げ目のパンケーキ。厚みは3センチ程はあるだろうか、乗せられたマーガリンが熱に溶けてとろりとしており、半透明のシロップと混ざりあっている。ナイフを差し入ればしっとりとした弾力がナイフを握る手に伝わった。フォークを差して口に入れる。しつこすぎない甘味。ふわふわした生地。マーガリンと甘い匂いが鼻を抜ける。
「美味しい!」
私は素直に感想を告げた。他のみんなもそれには同感なのか、同意するように頷く。マッシュが言った。
「ティナの言うとおりだぜ。料理について手も口も出さねえから、できねえもんだと思ってた」
言いながら黙って足を組んで座る黒装束の彼、シャドウに目を向ける。シャドウの目の前には彼の分のパンケーキが手付かずのまま置かれていた。食べないのだろうか。思いながらパンケーキを口に運ぶ。美味しい。
「しっかし、このナリでこんなファンシーなモン作るとはな」
セッツァーは言いつつも、味についての文句はないらしい。食べ進めるスピードは変わらない。
「ね、ねえ、シャドウ」
珍しくリルムが上目遣いに言った。いつもはすまして大人っぽく振舞っている彼女が、子供のようにはしゃいでいるように私は見えた。
「これ、このパンケーキね、リルムの好きなパンケーキの味とそっくりなの。どうやって作ったの?コツとかあるのよね?教えてよ」
「・・・普通に作っただけだ」
これまた珍しく、シャドウは困っているようだった。声音に後悔の色が含まれている。
「とは言っても、普通に作ってはここまで生地は膨らまないんじゃないかゾイ。コツは無いつもりでも、リルムが作るのとはまた違うのかもしれないゾイ」
「そうよ、そうよ!ねえ、レシピ書いて!できれば作り方見せてくれると・・・いいんだけど、なあ」
ストラゴスの擁護に乗っかるように勢いづいたリルムは尻すぼみにそう言った。ロックが行儀悪くフォークを歯で噛む。
「レイチェルのと作り方似てるかも。こんな感じのパンケーキを、よく作ってくれたよ」
「・・・へえ」
行儀の悪さを注意しようとしたセリスが、いつもより低いトーンで相槌をうった。
「あっ、いや、別にセリスの料理が駄目ってことじゃ!」
「誰もそんなこと言ってないわよ」
鋭く突っ込むセリスの言葉にロックが肩をすくめる。そんな二人を無視してエドガーが囃し立てた。
「教えてあげなよ、レディの頼みは迅速に応えるべきだぞシャドウ」
「・・・今度」
そんなエドガーの言葉に諦めたのか、元よりそのつもりだったのか、重く息を吐いてシャドウは言葉を続けた。
「日が空いたら教えてやる」
「・・・!」
リルムの顔色がパッと明るくなった。その表情はとても生き生きしている。モブリズの子供達を思い出して口角が緩んだ。いつもこんな顔をしていればいいのに、本当に可愛い。私は隣でガツガツとパンケーキを食べるガウの方を向いた。頬にカスがついていたので取ってやる。
「ガウガウ!ティナ、ありがとー!」
「どういたしまして。モグ、美味しい?」
「クポー!美味しいクポー!」
右隣にガウ。左隣にモグ。正面にリルム。ああ、本当にみんな可愛いわ。私は上機嫌にパンケーキを切り、口に運ぶ。
「・・・何故かわからんが、拙者寒気が・・・」
「・・・」
「ウー」
カイエンがよくわからないことを言った。そういえばすっかり見逃していたけど、ゴゴはどうやって食べたのかしら。皿の上は空っぽになっている。ウーマロはニコニコしながらお上品にフォークをパンケーキに突き刺していた。私がちゃんと教え込んだ事をきちんと実行してくれてるのね、偉い偉い。
「そういえばシャドウ、貴方は食べないの?」
リルムと言葉少なにやり取りしていたところにそう尋ねると、みんなも同じことを思っていたのかシャドウの方を向いた。
「・・・後で食う」
「暖かい内に食べた方がいいんじゃない?」
やはり火の通した料理は暖かい内に食べた方が良いだろう。そう思って言うと、何故かエドガーやセッツァーがニヤニヤとそれに同意した。
「そうだぞシャドウ、その覆面を取ってパンケーキを食べるんだ」
「大丈夫だぜシャドウ、どんなブ男でも俺たちは笑ったりしねえ」
何の話をしているんだろう。
「・・・」
それに対してシャドウはやはり沈黙を貫く。私は最後の一欠けらを口に運んだ。やっぱり美味しい。
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