幸せ
ガウとマッシュとカイエンの擬似家族
ガウは獣々原で育った。喉が渇いた時はレテ川の水を飲み、お腹が減れば木ノ実やモンスターを狩って自分で火を起こし食べた。モンスターとの戦いはいつも命の危機を感じたが、同時に気のおける友達でもあった。言葉は獣々原を通る親切な旅人が教えてくれた。
ガウには、人の友達はいなかったけれど、ガウはそれを寂しいとは思わなかった。
■
ーー室内だというのに、プンと鼻腔を差す鉄の匂いげ噎せ返る。それは現実のものではないはずなのに、ガウは自分の手にべっとりと血がついている感覚に襲われた。エドガーが着せてくれた動きづらいけど綺麗な服を動かし、歩きにくいピカピカの靴で踵を返す。
後を追ったマッシュは、立ち止まるガウの背中に申し訳無さそうに言った。
「すまねえ・・・つい・・・」
ガウは、とても嬉しかった。
「オ・・・ヤジ・・・いき・・・てる・・・ガウ・・・・・・し・・・あ・・・わ・・・せ・・・」
世界が崩壊した。色々なものが変わった。人が少なくなった。獣々原で自分を鍛えながら、モンスターでさえいる『親』という生き物を羨んだ。親なんていないものだと思っていた。いないはずはないのに、いないと思った。
マッシュが教えてくれたおかげで、ガウは幸せな気持ちになった。
「ござる・・・オヤジ、ガウ・・・おし、えた!・・・ガウ、うれしい、しあわせ!」
もう一度、叩きつけるように繰り返し、ガウができるだけの満面の笑みでマッシュをみつめると、マッシュは泣き笑いのような顔をしてガウの頭を撫でた。
■
ケフカを倒した。瓦礫の塔が崩れた。魔法が使えなくなった。ーー世界は平和になった。
ガウは教えてもらった単語を口の中で繰り返し、最後に問われた言葉を噛み砕いてちょっぴり考え込んだ。
「ガウは獣々原に帰るのか?」
マッシュの言葉だ。もっと前なら迷わず頷いたのだろう。けれど、ガウは頷けなかった。どうしよう。どうすれば。自分はどうしたいんだろう。考えるのは苦手だった。口を曲げて考え込むガウを見ていたカイエンが、一つ提案した。
「ならばガウ殿、わしとともにドマへ御座らんか?」
「う・・・?ドマ、カイエンのいえ?」
「うむ、家・・・間違いではないでござる。わしはこのあとドマに帰って国の復興をしようと思っているのでござる」
「ふっこー?」
小首をかしげたガウにマッシュが言った。
「もう一度国を復活させるんだ。ドマはいま・・・」
兵士不足もあるし王様が亡くなってしまったおかげで国全体が機能せず、国民の生活も貧困している、と続けようとしてマッシュは言葉に詰まった。
「・・・大変だからさ」
結局そんな有耶無耶な説明になったが、ガウはあらかじめカイエンから聞いていたためか納得したように頷く。カイエンが腰をかがめてガウを見た。
「ガウ殿の助力が欲しいのでござる」
「ガウ・・・てつだい、ひつ・・・よう?」
「金銭的なものはエドガー殿が手伝ってくれるそうなんだが、人手不足でのう」
照れたように笑う。ガウはしかし、自分に何ができるだろうかと思った。そう聞くと、カイエンは温かみのある目で優しく言う。
「残った兵士に指南してほしいのでござる」
「し、な、ん・・・」
ガウは頭の辞書(ページ数は薄い)をパラパラ開き、少し不安げに「教える?」と聞いた。
「あってるぜガウ」
「ガウ!へいし、ガウ、なにを教える?」
「ガウ殿は今までに沢山の術を学んだでござろう」
コクコクと頷く。
「その中でガウ殿が得意な術を兵士や生き残りの子供達に教えてあげてほしいのでござる」
「ガウ・・・ガウのわざ・・・まねっこ?」
そう言って、右手の爪を立ててひっかく真似をする。ガウはモンスターの真似をして攻撃を行う事ができるのだ。マッシュとカイエンが同時に頷いた。その仕草が妙に似ていたのがおかしくて、ガウが「くふふ」と笑うと二人は同時に微笑んだ。親子のようにそっくりだった。
「ガウ!まねっこ!ガウ、おしえる!ドマいく!」
言いながら、ガウはカイエンに飛びついた。ガウは幸せな気分になった。
■
「しかし、ガウは喋るのが上手くなったな」
じっと様子を見ていたエドガーが、僅かに口角を上げて呟いた。
ガウは獣々原で育った。喉が渇いた時はレテ川の水を飲み、お腹が減れば木ノ実やモンスターを狩って自分で火を起こし食べた。モンスターとの戦いはいつも命の危機を感じたが、同時に気のおける友達でもあった。言葉は獣々原を通る親切な旅人が教えてくれた。
ガウには、人の友達はいなかったけれど、ガウはそれを寂しいとは思わなかった。
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ーー室内だというのに、プンと鼻腔を差す鉄の匂いげ噎せ返る。それは現実のものではないはずなのに、ガウは自分の手にべっとりと血がついている感覚に襲われた。エドガーが着せてくれた動きづらいけど綺麗な服を動かし、歩きにくいピカピカの靴で踵を返す。
後を追ったマッシュは、立ち止まるガウの背中に申し訳無さそうに言った。
「すまねえ・・・つい・・・」
ガウは、とても嬉しかった。
「オ・・・ヤジ・・・いき・・・てる・・・ガウ・・・・・・し・・・あ・・・わ・・・せ・・・」
世界が崩壊した。色々なものが変わった。人が少なくなった。獣々原で自分を鍛えながら、モンスターでさえいる『親』という生き物を羨んだ。親なんていないものだと思っていた。いないはずはないのに、いないと思った。
マッシュが教えてくれたおかげで、ガウは幸せな気持ちになった。
「ござる・・・オヤジ、ガウ・・・おし、えた!・・・ガウ、うれしい、しあわせ!」
もう一度、叩きつけるように繰り返し、ガウができるだけの満面の笑みでマッシュをみつめると、マッシュは泣き笑いのような顔をしてガウの頭を撫でた。
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ケフカを倒した。瓦礫の塔が崩れた。魔法が使えなくなった。ーー世界は平和になった。
ガウは教えてもらった単語を口の中で繰り返し、最後に問われた言葉を噛み砕いてちょっぴり考え込んだ。
「ガウは獣々原に帰るのか?」
マッシュの言葉だ。もっと前なら迷わず頷いたのだろう。けれど、ガウは頷けなかった。どうしよう。どうすれば。自分はどうしたいんだろう。考えるのは苦手だった。口を曲げて考え込むガウを見ていたカイエンが、一つ提案した。
「ならばガウ殿、わしとともにドマへ御座らんか?」
「う・・・?ドマ、カイエンのいえ?」
「うむ、家・・・間違いではないでござる。わしはこのあとドマに帰って国の復興をしようと思っているのでござる」
「ふっこー?」
小首をかしげたガウにマッシュが言った。
「もう一度国を復活させるんだ。ドマはいま・・・」
兵士不足もあるし王様が亡くなってしまったおかげで国全体が機能せず、国民の生活も貧困している、と続けようとしてマッシュは言葉に詰まった。
「・・・大変だからさ」
結局そんな有耶無耶な説明になったが、ガウはあらかじめカイエンから聞いていたためか納得したように頷く。カイエンが腰をかがめてガウを見た。
「ガウ殿の助力が欲しいのでござる」
「ガウ・・・てつだい、ひつ・・・よう?」
「金銭的なものはエドガー殿が手伝ってくれるそうなんだが、人手不足でのう」
照れたように笑う。ガウはしかし、自分に何ができるだろうかと思った。そう聞くと、カイエンは温かみのある目で優しく言う。
「残った兵士に指南してほしいのでござる」
「し、な、ん・・・」
ガウは頭の辞書(ページ数は薄い)をパラパラ開き、少し不安げに「教える?」と聞いた。
「あってるぜガウ」
「ガウ!へいし、ガウ、なにを教える?」
「ガウ殿は今までに沢山の術を学んだでござろう」
コクコクと頷く。
「その中でガウ殿が得意な術を兵士や生き残りの子供達に教えてあげてほしいのでござる」
「ガウ・・・ガウのわざ・・・まねっこ?」
そう言って、右手の爪を立ててひっかく真似をする。ガウはモンスターの真似をして攻撃を行う事ができるのだ。マッシュとカイエンが同時に頷いた。その仕草が妙に似ていたのがおかしくて、ガウが「くふふ」と笑うと二人は同時に微笑んだ。親子のようにそっくりだった。
「ガウ!まねっこ!ガウ、おしえる!ドマいく!」
言いながら、ガウはカイエンに飛びついた。ガウは幸せな気分になった。
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「しかし、ガウは喋るのが上手くなったな」
じっと様子を見ていたエドガーが、僅かに口角を上げて呟いた。
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