道化と道化
ついったに垂れ流したケフカとゴゴ。崩壊後、ゾーンイーターに吸い込まれたケフカ話。ちょっと捏造多いので注意
気まぐれだった。世界が崩壊し、呆れかえるほど壊れた「おもちゃ」を集めて作った瓦礫の塔。その頂点にじっと立っているのは退屈で、時々モノを壊してみたけれど、それもすぐ飽きてしまう。人々は気丈にも物を作り直すので、完全に直った頃にまた壊そうとは思ったが、それまで待つのも飽きた。元々、待つのは苦手だ。
たまにはそこらを散歩するのもいいかもしれない。そう思って適当な島で適当に歩いていただけ。モンスターが出てくれば殺せばいい。ーーそんな油断がこのような事態を招いた。
色違いのものは見たことがあった。大きなミミズのような容貌をした巨大モンスター。いつものようにファイガを打てば死ぬはずだったのに、そのモンスターは攻撃するでもなく「吸い込んで」きたのだ。ケフカは常人に比べて背も低ければ体重も軽い。あっという間にモンスターの中に吸い込まれてしまった。
永遠とも思える時間落ちているかと思えば、突如として茶褐色の地面が目前に迫っていた。肩や足を打ち付け、ゴロゴロと転がる。少々腫れた頬を撫でながら、ケフカは起き上がった。
「いったぁ・・・」
声に覇気がない。
「くそっ!この俺様を飲み込みやがってっ!・・・いいや?それにしても妙だな」
ケフカは顎に手を当ててかかとで地面を叩いた。どう見ても固まった土か岩のように見える。生物の体内とは思えない。
「無意識にどこかの空間にワープしたか?」
言いながらゴツゴツとした岩の壁を撫でる。体内というより洞窟のようだ。ケフカには見覚えが全くなかった。記憶力には自信があるし、世界には似たような洞窟は沢山あるが、「何かが違う」。テレポは行ったことのある場所にしか行けない。それなのにケフカに覚えがない。記憶力に関しては自惚れではなかった。ケフカは1年前の今日の夕飯のメニューだって思い出せる。
「私に覚えがないというのは・・・許せないな」
探索しよう。ケフカはそう心に決めると早足に歩き始めた。
■
「くそっ、なんだってんだ!」
ケフカは迫る天井を後にした。一定の時間が経つと天井が一気に落ちてくる仕掛けーー危うくケフカはアリのように潰されるところだった。足取りがおぼつかない。相当走ったようだ。ブツブツと毒づきながら、ケフカはパッと思いついた。
「そうだ、浮けばいいんだ」
名案だ!とはしゃぐが、要は運動不足なだけである。
「――レビテト」
口の中で高速詠唱をする。パッと浮かび上がったケフカは次に「ヘイスト」を唱えた。動きを早くする魔法である。これでよし、とご機嫌に笑みを深めたケフカは鳥のように宙を飛び、洞窟の出入り口をくぐり、仕掛けがあるらしい部屋を素通りしてまた出入り口を通った。
どうやらここが最深部らしい。正面に階段がある。その階段を登った上に、ケフカに負けず劣らず奇妙な男(女かもしれない)が立っていた。極彩色のローブやカーディガンといった布を体中に巻きつけ、体型が全くわからない。だが、身長はさほど高くないようで、並べば同じくらいだろうということはケフカも理解できた。
「俺はゴゴ」
ゴゴと名乗ったソイツは一切の身じろぎもせず宙を浮かぶケフカを見上げた。
「ずっとものまねをして生きてきた」
「へぇ、それはそれは。じゃあ私の真似もできるんですか?」
「へぇ、それはそれは。じゃあ私の真似もできるんですか?ーーできるとも」
ゴゴはオウム返しにケフカの声真似をすると、困った様に首を傾げた。
「魔法はできない。目の前でやってみせてくれないか」
「わかるんですか」
驚愕と感嘆を込めて言うと、ゴゴはこっくり頷いた。
「何度か見たことがある」
こんな辺境の地で、魔法を見たことがある奇妙なものまね師。ケフカの好奇心をくすぐるのには十分すぎるほどだった。ケフカは魔法を解いてゴゴの前に降り立った。
「俺はケフカ。神様だよ」
「俺はケフカ。神様だよ。・・・ああ、塔の」
「流石にこれくらいは知っているか」
「流石にこれくらいは知っているか。風の便りでな」
「ここはどこだ?」
「ここはどこだ?ゾーンイーターの中」
「・・・嘘だろう?」
「・・・嘘だろう?」
ゴゴはくふくふと笑った。ケフカは胸がムカムカしてきた。
「オウム返しやめろよ」
「オウム返しやめろよ」
とうとう自分の言葉まで喋らなくなったゴゴに、ケフカは右足で地面をダンッと踏んだ。音が反響する。
「ぼくちんの言う事を聞け!」
「先ほどから情緒不安定だな。・・・俺様、私、俺、ぼくちん・・・神様はきちんとした人格も持っていないらしい」
「・・・見ていたのか?」
「音は筒抜けだ」
ケフカは力ずくでゴゴを屈服させようとして覆面を掴んだが、意外と強い力で手首を掴まれ、易々と外された。覆面から覗く色の見えない双眸がケフカを見つめる。
「お前は久しぶりの来客だ」
ここでくらいゆっくりしていけ。
ものまね師は言った。
気まぐれだった。世界が崩壊し、呆れかえるほど壊れた「おもちゃ」を集めて作った瓦礫の塔。その頂点にじっと立っているのは退屈で、時々モノを壊してみたけれど、それもすぐ飽きてしまう。人々は気丈にも物を作り直すので、完全に直った頃にまた壊そうとは思ったが、それまで待つのも飽きた。元々、待つのは苦手だ。
たまにはそこらを散歩するのもいいかもしれない。そう思って適当な島で適当に歩いていただけ。モンスターが出てくれば殺せばいい。ーーそんな油断がこのような事態を招いた。
色違いのものは見たことがあった。大きなミミズのような容貌をした巨大モンスター。いつものようにファイガを打てば死ぬはずだったのに、そのモンスターは攻撃するでもなく「吸い込んで」きたのだ。ケフカは常人に比べて背も低ければ体重も軽い。あっという間にモンスターの中に吸い込まれてしまった。
永遠とも思える時間落ちているかと思えば、突如として茶褐色の地面が目前に迫っていた。肩や足を打ち付け、ゴロゴロと転がる。少々腫れた頬を撫でながら、ケフカは起き上がった。
「いったぁ・・・」
声に覇気がない。
「くそっ!この俺様を飲み込みやがってっ!・・・いいや?それにしても妙だな」
ケフカは顎に手を当ててかかとで地面を叩いた。どう見ても固まった土か岩のように見える。生物の体内とは思えない。
「無意識にどこかの空間にワープしたか?」
言いながらゴツゴツとした岩の壁を撫でる。体内というより洞窟のようだ。ケフカには見覚えが全くなかった。記憶力には自信があるし、世界には似たような洞窟は沢山あるが、「何かが違う」。テレポは行ったことのある場所にしか行けない。それなのにケフカに覚えがない。記憶力に関しては自惚れではなかった。ケフカは1年前の今日の夕飯のメニューだって思い出せる。
「私に覚えがないというのは・・・許せないな」
探索しよう。ケフカはそう心に決めると早足に歩き始めた。
■
「くそっ、なんだってんだ!」
ケフカは迫る天井を後にした。一定の時間が経つと天井が一気に落ちてくる仕掛けーー危うくケフカはアリのように潰されるところだった。足取りがおぼつかない。相当走ったようだ。ブツブツと毒づきながら、ケフカはパッと思いついた。
「そうだ、浮けばいいんだ」
名案だ!とはしゃぐが、要は運動不足なだけである。
「――レビテト」
口の中で高速詠唱をする。パッと浮かび上がったケフカは次に「ヘイスト」を唱えた。動きを早くする魔法である。これでよし、とご機嫌に笑みを深めたケフカは鳥のように宙を飛び、洞窟の出入り口をくぐり、仕掛けがあるらしい部屋を素通りしてまた出入り口を通った。
どうやらここが最深部らしい。正面に階段がある。その階段を登った上に、ケフカに負けず劣らず奇妙な男(女かもしれない)が立っていた。極彩色のローブやカーディガンといった布を体中に巻きつけ、体型が全くわからない。だが、身長はさほど高くないようで、並べば同じくらいだろうということはケフカも理解できた。
「俺はゴゴ」
ゴゴと名乗ったソイツは一切の身じろぎもせず宙を浮かぶケフカを見上げた。
「ずっとものまねをして生きてきた」
「へぇ、それはそれは。じゃあ私の真似もできるんですか?」
「へぇ、それはそれは。じゃあ私の真似もできるんですか?ーーできるとも」
ゴゴはオウム返しにケフカの声真似をすると、困った様に首を傾げた。
「魔法はできない。目の前でやってみせてくれないか」
「わかるんですか」
驚愕と感嘆を込めて言うと、ゴゴはこっくり頷いた。
「何度か見たことがある」
こんな辺境の地で、魔法を見たことがある奇妙なものまね師。ケフカの好奇心をくすぐるのには十分すぎるほどだった。ケフカは魔法を解いてゴゴの前に降り立った。
「俺はケフカ。神様だよ」
「俺はケフカ。神様だよ。・・・ああ、塔の」
「流石にこれくらいは知っているか」
「流石にこれくらいは知っているか。風の便りでな」
「ここはどこだ?」
「ここはどこだ?ゾーンイーターの中」
「・・・嘘だろう?」
「・・・嘘だろう?」
ゴゴはくふくふと笑った。ケフカは胸がムカムカしてきた。
「オウム返しやめろよ」
「オウム返しやめろよ」
とうとう自分の言葉まで喋らなくなったゴゴに、ケフカは右足で地面をダンッと踏んだ。音が反響する。
「ぼくちんの言う事を聞け!」
「先ほどから情緒不安定だな。・・・俺様、私、俺、ぼくちん・・・神様はきちんとした人格も持っていないらしい」
「・・・見ていたのか?」
「音は筒抜けだ」
ケフカは力ずくでゴゴを屈服させようとして覆面を掴んだが、意外と強い力で手首を掴まれ、易々と外された。覆面から覗く色の見えない双眸がケフカを見つめる。
「お前は久しぶりの来客だ」
ここでくらいゆっくりしていけ。
ものまね師は言った。
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