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ティナちゃんが召喚されたようです3

ゼロ魔×FF6。キュルケちゃんマジ聖母
 

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少し考え、ルイズはティナもベッドに入れることにした。床に寝かせるのはどうにも目覚めが悪い。これでソファーか何か置いておけばそこにティナを寝かせるのだが、そんなものは存在しない。疲れ果てていたルイズはあっという間に眠りについた。

――ルイズは夢を見た。

ティナが戦っていた。奇妙な乗り物に乗っている。その乗り物は爆発のエクスプロージョンの比ではない、強力な魔法を放っていた。たくさんの人が死んでいた。兵士のようだったが、ルイズはその死体に目がいかなかった。鳶色の双眸が見つめている先は、ティナだった。

ティナは無表情だった!無感情だった!淡々と、機械的に人を殺している。ルイズは恐怖した。ティナ自身、戦ったことがあると言っていたが、まさかこれのことだろうか?そう悶々と考えていると唐突に場面転換した。それは先ほどのリアリティある映像ではなかった。色だ。小麦色。鮮やかな銀色。若草色。白色。――髪の色だろうか?そうルイズが推測したとき、水中から浮き上がるように目が覚めた。

窓の光が目を焼く――そう感じてしまうほど太陽の光が眩しい。隣に寝ているはずのティナはいない。洗濯物の入った籠もないので、おそらく洗濯に行ったのだろう。彼女が寝巻きにしていたはずのネグリジェは、綺麗に畳まれてテーブルに置かれていた。

「・・・所詮は夢?いいえ、そんな言葉じゃ片付けられないわ・・・」

額に手を当てて俯いたルイズの表情は、硬く険しいものだった。



ひとまず着替え、時計を確認するといつもより1時間も早く目覚めたことに気付いた。朝食までに時間の余裕があるので、厨房へ向かう。厨房では料理人が忙しなく歩き回っていた。時折飛び出す怒号に肩をすくめる。話しかけづらい。

「あの、どうしました?」

その時、一人の少女がルイズに声をかけた。どうやら奉公にきた少女らしい。この地域では珍しい黒髪を持つ、可愛いという単語がよく似合う少女だ。ルイズは頬の筋肉を緩めた。漸く話しやすい人を見つけた。

「その・・・私の使い魔の分の料理を作って欲しいと思って」
「ええ?・・・あ、申し訳ございません。お言葉ですが、使い魔には使い魔用のご飯が・・・」
「あーいや、そのう、私の使い魔は・・・人間なの」

頬をかきながら上目遣いにメイドの少女を伺う。馬鹿にされてしまうだろうかと思ったが、そうではないらしく、メイドの少女は神妙な顔で「なるほど、わかりました。コック長のマルトーさんにお伝えしておきますね」と頷いた。

「ありがとう!それと、席も一つ分用意してくれないかしら。椅子は生徒分しかなかったでしょう?」
「ええ、かしこまりました。となると、お料理のメニューも・・・」
「私たち貴族と同じものを・・・お願いできるかしら。お金を払ったほうがいい?」

いざとなればお小遣いを叩いて用意させよう、とルイズが腹を括っていると、メイドの少女はあっさり応じた。

「大丈夫ですよ、用意できます」
「よかったあ!・・・あ、ご、ごほんっ。それじゃあ、よろしくね。えーと、失礼だけどお名前は?私はルイズ。ルイズ・ラ・ヴァリエールよ」
「シエスタと申します。ミス・ヴァリエール、よろしくお願いします。・・・ええと、それでは私は仕事がありますので」

シエスタは愛嬌たっぷりに笑みを浮かべ、恭しく腰を折った。嫌味を感じさせない素直な反応だ。ルイズは気持ちの良い気分のまま厨房を後にした。

部屋に戻るとティナがいた。

「おはようティナ」
「・・・?」

ルイズは苦笑を浮かべながら教える。

「朝の挨拶よ。おはようって言われたらおはようと返すの。やり直すわよ、おはようティナ」
「おはよう、ルイズ」

ティナは言いながら洗濯籠を下ろす。中身はない。

「洗濯してきてくれたの?」
「ええ。・・・実は水場に行くまでに迷ってしまって・・・洗濯はすぐに終わったのだけれど」
「ああ、地図を書いておけば良かったわね。簡単にこの学院の地図を書いておくわ」

言いながら椅子を引いて新たな羊皮紙を取り出す。ペン先にインクを浸し学院囲う線を描いていると、ティナが昨日書いた羊皮紙を取り出して、心なしか興奮混じりに言った。

「ルイズは絵が上手いわ。私、ずっと持っておくわね。いいでしょう」
「いいけれど、ティナにはあんまり関係ないわよ」

使い魔の心得なんてティナには必要無い。ルイズは一瞬迷ったが教室の場所も事細かに書く事にした。

「でも気に入ったの。誰かに見せびらかしてしまうかもしれないわ」
「・・・やだ、恥ずかしいわ」

ティナはおかしそうに笑った。とは言っても、ティナの唇から息が少し抜けただけで、それが笑うという声なのかはルイズの勝手な妄想だった。

「――・・・さ、できたわ。簡単なものだけどどうぞ」

ルイズは書き終えた学院の地図をティナに渡した。ティナは嬉しそうにそれを受け取る。と、そこまで見届けてルイズは小首を傾げた。

「ねえティナ、文字を読めるの?」
「え?・・・えぇ、読めるわ。・・・変ね、こんな文字見たことないのに・・・」

ティナも首を傾げる。と、その時、ティナが端正な顔を歪めこめかみを抑えた。苦しそうに呻き、その場に蹲る。ルイズは慌ててティナの肩に手を置き、こめかみを抑えるほっそりとした手を撫でた。

「大丈夫?」
「頭が・・・痛い・・・」

ゆっくりと瞼を落とし、ずっしりとした重みがルイズにのしかかった。気絶したようだ。ルイズは念のため唇に耳を近づける。息に異変はない。ただの頭痛で気絶するなんて妙だ。もしかしたら自分が今朝見た夢と何か関係あるのかもしれない――そこまで考えて部屋の扉が開いた。

「ルイズ、起きてる?・・・どうしたの!」
「キュルケ?勝手に部屋に入らないでよ――いや、そうじゃない。ティナが気絶したの。こういうときどうすればいいの?」
「気絶する前どんな様子だった?」

言いながら豊満なボディを持った褐色肌の美女、キュルケが部屋に入ってくる。彼女の使い魔であるサラマンダーもいたが、ルイズは気にしなかった。

「頭が痛い、って・・・」
「熱は?」

腰をかがめ、ティナの額に手を当て、自分の額に手を置く。こういう時は年上らしい、とルイズは思った。

「熱はないみたいね。他に何かなかった?」
「いいえ」
「・・・記憶喪失と何か関係あるかもしれないわ。水のメイジ、いや・・・」

キュルケは一度言葉を切って言った。

「ミスタ・コルベールを呼んでくるわ」
「え?」
「フレイムを置いておくから、あなたは・・・ええと、ティナって言ったかしら。彼女をベッドに寝かせて待ってて。まだ朝食まで時間あるでしょ」

矢継ぎ早にそう告げると、キュルケは部屋を出て行った。
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