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香水5

あらすじ:にょたシャドウが少しだけ過去を話しました

お久しぶりです。アレの続き。リルムとシャド子の記憶の齟齬とエドガーのきもち

エドシャド(♀)っぽくなるのは一体いつだろう

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「記憶違いにしては、あまりにも……」

シャドウの知っている夫の死は、猟に向かってモンスターに殺された。リルムの語った父の死は病死だ。モンスターに殺されたという事実を、幼い娘に教えたくなくて病死した、と誰かが説明したのならばまだ納得はつくが、リルム曰く『シャドウが村を去ったあと』病死したらしい。それはあまりに不可解な記憶の齟齬(齟齬と言って良いのだろうか)だった。

少し考え事をするような仕草をしたあと、彼女はゆるゆると頭を振った。

「この話は、もういい。……それで」

上目遣いにエドガーを見上げたシャドウは、片眉を上げた。

「何か用があるんじゃないのか」
「ああ。いや、さっき言ったとおり、傷の具合を聞きに来ただけなんだ。いま、飛空艇でみんなを帰る場所まで送っているところでね。もし飛空艇を降りるなら、なるべく万全の状態が良いだろう?」
「おかげさまで、痛みはほとんど引いている」
「そうか、よかった」

ほっと息を吐くエドガーの表情は安堵に包まれている。それを見て僅かに眉根を寄せたシャドウは、(何故お前が安心する)と言いかけて口を閉じた。自分の考えがこの男を心配しているようで気に食わなかったらしい。

「……喋りすぎた」

代わりに全く可愛くない台詞を吐く。

「私はあなたの言葉で色々聞けて、満足だけどね」
「そういうのを自己中心的と言うんだ」
「おや、つれない」

声音が軽薄な割に、表情は穏やかだ。そんな彼に思うことは多々あるものの、口には出さないシャドウは、小さく寝息をたてる娘の頭を控えめに撫でた。リルムは猫っ毛なので触り心地はふわふわしていて中々心地よい。本人も撫でられるのが好きなのか、時たま仲間の誰かにちょっかいをかけては頭を撫でろとおねだりしていた。態度が堂々としすぎて、皆苦笑していたが……。

「リルムのことを、どう思っているんだい」
「聞いてどうする」

……可愛い娘とは思っている。しかしそれよりも、『自分が捨てた娘』という思いの方が先立って、この長い旅路の間あまり接触をしなかった。否、どうやって接しろというのだ。たとえリルムに殺意を持たれたとして、シャドウはそれを甘んじて受け止めたりはせず、容赦なく迎え撃つだろう。自分を害する者は敵だからだ。『可愛い娘』、『自分の子供』、そうは考えても『守るべき存在』とは一切考えなかった。それは正しい親子の関係を築く前に共に戦う仲間としての関係を結んでしまったからだ。

だからきっと、本当の親子にはなれない。シャドウにはその歩み寄りができない。……が、この考えを話すほどこれまでエドガーと口を利いたわけではない。うっかり喋りすぎたところはあったが、もしこの言葉をリルムに聞かれたらと思うとゾッとする。シャドウは口を噤むほか無かった。

「別に、どうもしないよ」

しかも、どうもこの男、普段の理性的な面はどこへやら。何も考えていない様子だ。呆れ混じりに「無神経と言われないか」と言うと、何故か自信満々に「生憎と、この28年間で一度も言われたことがない」と答える。

シャドウがキッと鋭い眼光で睨みつけると、エドガーは肩を竦めた。

「すまない。普段の私ならとっくに引き下がってるんだけど……」

それはシャドウも思っていた。というか、先程からいやに突っ込まれたくないところを堂々と突っ込んでくる。相手が相手なら神経に障る言い方もあった。勿論シャドウだって気にしないわけではなかったが、一々それを相手に伝えるほど『優しくない』。

「どうにも、あなたに対する好奇心が留まることを知らない」

それを聞いたシャドウが呟いた自己中、という言葉に少しも傷ついた様子を見せず、エドガーは続けた。

「私は、あなたが好きなようだ」

――は。と、息の抜けるような声が漏れた。いまこの男はなんて言った。すき、好き、……好き?言葉の意味を理解しきる前に、エドガーがシャドウの手を取る。腰をかがめて目線を合わせる。涼やかな青い瞳が真っ直ぐシャドウを見つめていた。顔が近い。

「あなたは既婚者だから求婚はしないが……せめて私の気持ちは聞いてほうぐっ」
「ちょっと待てや色男ォ……」

気付けばエドガーが顎を抑えて後退りをしていた。正面にはいつの間にか起きていたのか、リルムの後ろ姿がある。右手を振りかぶった後のようなポーズをしているので、おそらくリルムがエドガーの顎を殴ったのだろう。大の男を怯ませる程度の腕力に、たくましく育ったな、と関係のないことを考える。シャドウの頭はいまいちこの状況を理解しきれていなかった。
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プロフィール

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ヨーカ
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自己紹介:
オインゴが嫁でシャドウが愛人です

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