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やってしまった

×TOA。なぜシャドウがショタ化しているのかって?そのままだったら無双しちゃうじゃない…そんな楽させないわよ……
これの続き

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あらすじ:ルークとティアちゃんと合流したよ!
ついでに色々知ってそうなティアちゃんに世界観の説明をしてもらったよ!シャドウさん頭が痛いよ!
 辻馬車とタルタロスの邂逅はカットしていきなりエンゲーブだよ!
 
注意:仲間厳し目要素があるけどシャドウさんが心の中で時々毒を吐く程度だよ!それでも苦手な人は注意してね!!



「へぇ、美味そうな林檎だな」

エンゲーブは農業が豊かな村らしく、色とりどりの野菜や果物が市場に並べられている。どの店もたくさんの客で賑わっており、その雑踏は港町ニケアを思わせた。大人ばかりではなく、年端もいかぬ子供でさえ露店を広げていたことは記憶に新しい。

手違いで真逆の国に向かおうとしていたことに早い段階で気付いたのは、ある意味奇跡と言えよう。環境が突然変わった現実にらしくもなく参っていたらしい、とシャドウは小さく溜息を吐く。世界観がまるまる違うのだから動揺するのも当然だった。なによりこの世界では魔力という存在そのものが無い、という事実が最も衝撃的だったのだが。

少しおさらいしよう。惑星の名はオールドラント。オールドラントを支配する二つの大国、キムラスカ・ランバルディア王国とマルクト帝国。両国の間を取り持つローレライ教団。この三つを抑えておけばあとはいいだろう、とシャドウは考えた。一々ものの名前を覚えるのは面倒くさい。大まかな要点さえわかればいい。

シャドウが知る魔力に相応するのが音素(フォニム)。音素には7属性あり、この音素を操る者を譜術士(フォニマー)と呼ぶらしい。魔道士のようなものだと考えればいいだろう。しかし、7つの属性のうちの1つ、第七音素(セブンスフォニム)と呼ばれる音素だけは例外のようだ。第七音素は先天的な素質を持つ者しか操ることができないらしい。なぜかはティアでもわからないらしいが、第七音素の素養を持つ譜術士は癒しの力や預言の力を持っているらしく、どの国でも重宝されているようだ。

そして何より重要なのは、この惑星では2千年前にユリアという預言士(スコアラー)が詠んだという預言(スコア)が遵守されている、ということである。それはもうこの惑星の人間にとっては常識といっても差し支えがないらしく、シャドウの質問にルークでさえ首を傾げていたくらいだった。

不容易な発言は身を滅ぼすな、とシャドウが沈痛な面持ちで考えていると、瞬間周囲の雑踏が海中から浮上するように存在を主張し始めた。ルークが一口齧った林檎をもって、店の主人と何やら話している。背後でティアは呆れ顔だ。

「おい!金を払わねーなら警備軍に突き出すぞ!」

……買い物の仕方を知らないのか?状況で大体の話の流れが掴めたシャドウは、一瞬顔をしかめたが、このままでは本当にルークが牢屋行きになりかねないと判断して一歩足を出す。

ルークの身長はセリスと同じ程度だが、現在どんなミラクルがあったのか子供になっているシャドウとは数十センチも差がある。店の主人はこちらに近づいてきた子供の姿を見ると訝しげな表情を浮かべた。お使いなら今の状況を見て後ろに下がっててくれとでも言いたそうだ。

「連れが失礼した。少し、世間に疎いんだ」

そう言って道中魔物を狩った際手に入った高価を何枚か渡し(店の主人は困惑しつつもしっかり受け取った)、ルークの白いコートを引っ張る。集まってきた野次馬を睨みつけると、見た目の割に目付きが悪いシャドウに物怖じしたのか、迫力に負けたのか、あっさりと道を開けた。

シャドウは歩きながらルークに声をかける。

「ルーク」
「な、なんだよ」
「物を勝手に盗られたらどうする」
「どうするって」
「……」
「…お、怒る」
「なぜ」
「だって、俺の物だぞ。なんの許可もなく盗られたら、嫌だ」

歯にものが挟まったような、歯切れの悪い言葉だった。言いながらシャドウの言いたいことがなんとなくわかったらしい。バツの悪そうな表情を浮かべている。

「お前がどんな生活をおくっていたかは知らんが、最低限の常識だ。覚えろ」
「……わ、わかった」

どこか威圧的なシャドウにルークはしどろもどろ応える。シャドウにとっては自然体でも淡々とした物言いや目付きの悪さはマイナスイメージしか生まなかったようだ。大人しく頷くあたりシャドウの言うことは正しいと思ったようだが、一歩間違えればルークに反感を買われそうである。

「本当に何も知らないのね」

眉を顰めてティアが言う。その言葉にルークが噛み付こうとしたが、すぐさまシャドウがコートの袖を引っ張って制した。

「っなんだよ!」
「お前が悪い」
「けど!」
「ティアも一言多い」

そう言うと、二人とも目を丸くさせる。それ以上は何も言わず、シャドウは一度辺りを見渡して宿らしき建物がないことを確認すると、適当に村人を捕まえて宿の場所を訊いた。勿論恐喝はしていないが、子供らしからぬ異様な雰囲気を纏うシャドウに、村人は完全に腰が引けていた。中身は元ちんぴらのアサシンなので、当然といえば当然なのだが。

黙ってシャドウの後ろをついてきていた二人は、気まずそうに顔を見合わせていた。やがてティアが「言い過ぎたわ、ごめんなさい」と言うと、ルークもまた「いや、俺も……」と口元をへの字に歪ませる。

「宿」
「え?」

シャドウの言葉は基本的に主語がない。声も注意していないとはっきりと聞き取れないのだ。一言だけ呟くように言って指をさすと、ティアとルークも同じように指先の方を見る。

「……もしかして、宿か?」
「……」

ルークの言葉に黙ってこっくり頷くと、さっさと歩を進めていく。先を進む小柄な背中に、ルークはふと違和感を覚えた。しかし、すぐに勘違いと思い直すとシャドウを追い抜かす。宿と思われる建物は、何故か人だかりができていた。

「なんだ……?」

三人が顔を見合わせると同時に宿の扉が開く。会話の内容を要約すると、どうやら食料泥棒が出たらしい。その中で出てきた『漆黒の翼』に、ルークが反応する。このエンゲーブに来てしまった原因である『辻馬車』の馭者(ぎょしゃ)に漆黒の翼ではないかと疑われたのだ。シャドウは疑われたことよりもそのネーミングセンスに既視感を覚えていたが、ルークは泥棒扱いされてかなり癪に障っていたらしい。

「漆黒の翼って奴らは、食べ物なんか盗むのか?」

その言葉に村人の男は殺気立って言い返すが、ルークには意味が理解できなかったらしく、「食べ物くらいならまた買えばいいじゃん」と当然のように言葉を返す。シャドウは黙って腕を組んだ。確かに食べ物ならばまた買えば取り返しがきくかもしれないが、そういうことじゃない。そういうことじゃない。……が、どうやって噛み砕いて説明すればいい。元々喋るのは苦手なシャドウは、そこまで考えて思考を放棄した。面倒くさい。

「ルーク、待て」
「うぉっな、なな、なんだよ!突然引っ張るな!」

これ以上墓穴を掘る前に、と少し強めにコートを引っ張ると、ルークは仰天したように声を張り上げた。

「エンゲーブはバチカルではない」
「あ?……当たり前だろ、こんな田舎とバチカルじゃ全然ちげーよ」
「なんだと!?」
「……。バチカルでは農業はできない。だろう」
「あ、あーまぁ、見たことはねえ、かも」
「だからよその食べ物を買う。だがエンゲーブはそうではない」

淡々と言葉を続けるシャドウの意図を、ルークは掴みかねているようだった。と、その時「ケリーさんのところも食料泥棒が来たって?」と村人の一人が3人の背後に声をかける。そこには、ルークが先ほど買い物を失敗した店の主人が立っていた。ケリーと呼ばれた中年男性はルークを見るなりサッと顔色を変えた。……嫌な予感がする。

「お前!俺のところで盗んだだけじゃなくて、ここでもやらかしたのか!」

その言葉が村人たちの疑心暗鬼を最高潮にさせたらしい。シャドウとティアが口を挟む間もなく、あれよあれよとルークは「役人に突き出す」といきり立つ村人たちに連れ去られてしまった。

「……このまま捕まった方がルークのためかもしれないわね」
(あいつの性格上、素直に意味を受け取るとも思えんが)
「追いかけるぞ」
「あ、待って」

スタスタと歩き始めようとしたシャドウの肩を、意外と強い力でティアが引き止める。軍人だと自称していたがあながち間違いでもないらしい。なんだ、と無表情で見上げるシャドウに、ティアは腰をかがめた。そのまま足に触れるティアに眉根を寄せる。

「やっぱり。あなた靴を持ってないのね。なぜ言わなかったの?痛かったでしょう」

シャドウの足は、丁度裾の長いズボンに隠れている。そのせいで誰も気付かなかったらしい。硬い地面に晒された生白い足は細かい傷ができて痛々しい。普通の子供ならば根を上げるが、生憎と普通ではないシャドウはティアの非難するような言葉に沈黙を貫く。

「とりあえず足の傷は私が治すけど、早いうちに靴を買った方がいいわ」

そう言うティアの手から、暖かな白い光が溢れ出している。光が消えると足の傷は一つもなかった。弱い光であることから、下級魔法のケアルと同じようなものだろう。と、そこまで考えて、シャドウは今の自分は魔法を使えるのだろうかという疑問が浮かんだ。……今は確認できる場所も時間もない。

そんなことを考えていると、何故かティアが頬を赤らめてシャドウの顔色を伺っている。

「それで、その、シャドウ」
「……」
「わ、私が、抱えて「必要無い」そ、そうよね……」

ティアがボソボソと「せっかく顔は可愛いのに……」と言っていたが、シャドウは聞こえなかったことにした。



二人がルークが連れて行かれた家に着くと、まず目に入ったのはその青い制服だった。ティアが「マルクトの軍人?」と小さくこぼしていたので軍服なのだろう。青い軍服を纏った長身の男は、くすんだ金髪を肩のあたりまで垂らし、少し野暮ったさの目立つ眼鏡をかけている。眼鏡の向こうにある瞳は目が覚めるような赤色だ。

「なんだよ、あんた」
「私はマルクト帝国軍第三師団所属ジェイド・カーティス大佐です。あなたは?」
「ルークだ。ルーク「おい」……今度はなんだよ!お前、生意気だぞ!」

先ほどより一層コートを強く引っ張るシャドウに、とうとうルークが苛立ちを込めて声を張り上げる。しかしシャドウは動じない。無表情のまま「ここは敵国だ。フルネームはやめた方がいい」とだけ告げてコートを離す。ティアが小声で補足していると、流石に不思議に思ったのか男が問いかける。

「どうかしましたか?」
「失礼しました、大佐」

言ってティアはルークを突き放し、代わりにシャドウの手を引いて向き直る。

「彼はルーク。私はティア。この子はシャドウ。ケセドニアへ行く途中でしたが、辻馬車を乗り間違えてここまで来ました」
「おや、ではあなたも漆黒の翼だと疑われている彼の仲間ですか?」
(やはり疑われているのか)
「私たちは漆黒の翼ではありません。本物の漆黒の翼は、マルクト軍がローテルロー橋の向こうへ追いつめていたはずですが」

するとジェイドと名乗った軍人は、ああなるほど、と合点がいったように微かな笑みを浮かべる。

「あの辻馬車にあなたたちも乗っていたんですね」

そういえば、とシャドウは記憶を遡る。辻馬車に揺られていると、平和な草原に不似合いな轟音が響いたのだ。盗賊が乗っているという馬車を、軍の陸艦が攻撃していたらしく、丁度馬車とすれ違うように走っていた辻馬車を陸艦のアナウンスが「道を空けないと巻き込まれる」と警告してきたのだ。この口ぶりからすると、陸艦の指揮をしていたのはジェイドだったようだ。

小太りの夫人が「どういうことですか、大佐」とジェイドを見上げる。

「いえ。ティアさんが仰った通り、漆黒の翼らしき盗賊はキムラスカ王国の方へ逃走しました。彼らは漆黒の翼ではないと思いますよ。私が保証します」

絶対にそうだ、と息巻いていた村人たちがジェイドの言葉にざわめき出す。ルークが目を細めて「だから違うって言ってんのに」と小さく呟いた。村人たちの声でほとんどかき消されてしまっていたが。

「ただの食糧泥棒でもなさそうですね」

その時、よく通る高い声が響いた。開け放たれた扉に白いローブを身に纏った少年が立っている。少年……だろう。幼さの残る面立ちや、細い肢体は一見少女のようにも見える。気弱そうな表情が少年の女々しさを増幅させていた。少年の姿を見たジェイドが「イオン様」と呟いて目を細める。

「少し気になったので、食料庫を調べさせていただきました。部屋の隅にこんなものが落ちていましたよ」
「こいつは……聖獣チーグルの毛だねぇ」

少年が小太りの夫人に何か手渡すと、夫人は目を見張って驚愕したように言った。少年はおそらくチーグルの仕業だ、と推測する。

「チーグルってのは……」
「東ルグニカ平野の森に生息する草食獣よ。始祖ユリアと並んでローレライ教団の象徴になってるわ。生息地は、ちょうどこの村の北あたりね」
(……モーグリみたいなものか?アレは聖獣ではなかったが)
「ほら見ろ!だから泥棒じゃねえっつったんだよ!」

よく話もせずに連れて来られたせいか、ルークはかなり苛立っていたようだ。村人の一人、特に林檎屋の主人であるケリーを思い切り睨めつけていた。ケリーは気まずそうに目尻を下げる。

「でも、お金を払う前に林檎を食べたのは事実よ。疑われる行動を取ったことを反省するべきだわ」

少し調子に乗っていたルークを落ち着かせるように、ティアが刺々しい言葉で責める。明らかに年下のシャドウに注意されたことを思い出したのか、ルークはそれ以上言及せず、むっとした表情で黙り込んだ。会話の区切りがついたと思ったのか、夫人が村人を見渡して言う。

「どうやら一件落着のようだね。あんたたち、この坊やたちに言うことがあるんじゃないのかい?」

その言葉に村人たちはおずおずとルークに謝罪の言葉を重ねる。特にケリーは、自分がルークを引っ張って連れて行ったこともあるためひどく申し訳なさそうな表情でルークの顔色を伺っていた。

(人の好い人間ばかりだな)
「坊やたちも、それで許してくれるかい?」
「……俺も勝手に林檎食っちまったし、別に……あ!俺は坊やじゃねえぞ!」

取ってつけたように夫人の言葉に噛み付いたルークに、夫人は心底おかしそうに笑う。そんな夫人にルークは何を言うでもなく頬を膨らませ、「おら、シャドウ、ティア、行くぞ!」と足早に家を出て行った。

「さて、あたしは大佐と話がある。チーグルのことは何らかの防衛手段を考えてみるから、今日のところは、みんな帰っとくれ」



補足

預言知ってるルーク/ルークが預言遵守かどうかはともかく預言の存在自体は知ってる。ガイは絶対教えてる。ただこの時点でルークがどこまで知識をつけているのか忘れたので補足

シャドウに違和感を覚えるルーク/(なんかアイツ歩き方おかしいよな……)って思ってた。靴履いてないのもあるけど、シャドウさんは基本気配を殺すように歩いているので、微妙に勘がいいルークは違和感を覚えた

ティアのシャドウに対する認識/シャドウがチビなせいで扱いがミュウレベル。無駄に小奇麗な顔してるせい

やたらとルークに世話を焼くシャドウ/元から結構世話焼き(無償で道案内、ティナちゃんにアドバイス、魔大陸での活躍)
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プロフィール

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ヨーカ
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性別:
女性
自己紹介:
オインゴが嫁でシャドウが愛人です

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