恋の魔法
ティナ♂→シャドウ♀。18歳と30代後半のばば…お姉さん。セリス♂×ロック♀も出てくる上に一人称がセリスなのでそれっぽくない。続きます
「シャドウを見ると、胸がキューってして、風邪みたいにクラクラするんだ」
形の良い整った眉を寄せ、心臓のあたりに両手を添える彼の姿は、恋する乙女そのものだった。俺は叫びだしそうになるのを必死に抑え、なるべく朗らかに聞く。
「へ、へえ・・・病気かな、エスナかけようか?」
「やってみたけど治らなくて・・・どうすればいいんだろう」
もしかしたら今後戦闘に役立たなくなってしまうかもしれない、と深刻そうに告げる彼は、”ソレ”の正体が分かっていないらしい。これは俺からきちんと教えてやった方が良いのだろうか。それにしたって、なぜシャドウに惹かれたのだろうか。そんな疑問が湧いて出てきたが、取り敢えず部屋を移して少し話をしようと思った。いくらなんでも、みんながいる広間で恋愛相談をするつもりはない。
「わかった、教えてやるよ。・・・ロック!ちょっと来てくれ!」
「なにー?」
「相談があるんだ、俺の部屋にきてくれ。ティナ、行くぞ」
「え?う、うん・・・」
弱々しく返事をしたティナの手を強引に引っ張り、ずんずんと部屋へ向かった。
■
「まずティナ。胸がキューってして、風邪みたいにクラクラするのは病気じゃない」
そう告げると、彼はあからさまにホッとした顔をした。傍らに座るロックが目を丸くさせる。
「なあに、それ」
「・・・ティナ、よく聞けよ」
「う、うん」
生唾を飲み込む音がした。俺は重々しく告げた。
「お前は、シャドウに恋をしている」
ロックの息を飲む気配がする。どんな反応をするかと横目で見ていると、
「えーっ!」
目を剥いて驚いた。ティナはびくりと肩をすくめるが、それよりも俺の言った言葉の意味が気になったのか、恐る恐る訪ねてきた。
「恋って、その人のことを好きになるってこと・・・?」
「ああ」
「でも僕、セリスやロックのことも好きだよ」
「違うよティナ、あなたはシャドウのことを愛してるんだよ」
俺が言おうとしたことをロックが遮って言った。ティナがロックの方を見ると、ロックは腕をくんでうんうんと頷いている。やはり呼んでよかった。女性は恋だとか愛だとかに詳しい。俺では不可能な返答をしてくれるだろう。
「愛してる?」
「そう。勿論、モブリズの子供達に対する”愛すること”じゃない。異性に対する”愛”なの」
「・・・難しいな」
「これからわかればいいのよ」
そう言って太陽のような満面の笑みを浮かべる彼女は楽しそうだ。かわいい。
「シャドウのどんなところが好き?」
「え?えっと、クールだけど優しいところとか、剣の手入れとか手裏剣の手入れは上手なのに、料理はちょっと苦手なところとか・・・」
「ギャップ萌えってわけね!」
「ぎゃ、ぎゃっぷもえ・・・?」
「ようし、ロックお姉さんがティナの恋を応援したげる!ちょっと、セリス!」
「お、おう?」
突然名前を呼ばれたので奇妙な返事をしてしまった。ロックは椅子に座る俺を無理矢理立たせ、扉の方へ押しやると、
「セリスはシャドウにティナへ関心を持たせてきて」
と無茶な注文をした。反論しようとすると大きな瞳でこちらを睨んでくる。・・・いや、おそらく本人は睨んでいるつもりなのだろうが、俺からすれば上目遣いで見つめているようにしか見えない。そんなことを口に出せば彼女の機嫌を損ねるので、大人しく言う事を聞くことにした。
「わかったよ」
「じゃあよろしくね」
背後で扉の閉まる音がする。俺は重く息を吐いた。どうしたものか。
取り敢えずシャドウを見つけねば話も進まない。俺は適当に廊下を歩くことにした。と、曲がり角を進んだとき、目の前に真っ黒な影が迫っていて俺は思わず息を詰めて後ずさりした。
「っ!」
「・・・すまん」
「しゃ、シャドウか・・・」
唯一見える双眸は反省の色は見られない。この女はよく足音を消しているので、曲がり角で出会うとほとんどの人間が心臓に悪い思いをする。せめて気配は放(はな)っておいてくれといっても「こればかりはどうしようもない」と珍しく困ったような声音で言っていたことを思い出した。
しかしこれは好都合だ。俺は去ろうとするシャドウを無理矢理引き止めた。
「あー、突然なんだけど、これから用事はあるか」
「・・・何か用か?」
流石に察しが良い。俺は簡潔に要件を告げた。
「実は戦闘について相談があるんだ。お前は剣を使うだろう?」
「・・・カイエン辺りに言ったらどうだ」
「いや、それも考えたんだが、カイエンと俺たちは剣の持ち方からして違うからさ」
我ながら苦しい。剣使いならエドガーや、それこそティナだっている。態々シャドウに話を持ちかけるのは不自然だ。しかし、シャドウはそれに気付いているのかいないのか、思っていたよりもあっさりと応じた。
「悪いけど、俺の部・・・」
そこまで言いかけて、俺の部屋はいまロックとティナが使っていることを思い出した。煙たがられるかもしれないと思いつつ尋ねる。
「いや、シャドウの部屋へ行っていいかな」
「・・・いいだろう」
不気味なほど素直に頷いた彼女は、俺の脇を通り過ぎてすぐ手前のドアノブに手をかけた。案外、近くの部屋に宛てがわれていたらしい。全く覚えていなかった。きぃ、と扉が開かれる。インターセプターが真っ先に部屋に入る。と、シャドウがこちらへ振り返って言った。
「入れ」
「え?あ、うん・・・おじゃまします・・・?」
恐る恐る入ると、そのすぐ後ろからシャドウがついてくる。扉の閉まる音がした。
「シャドウを見ると、胸がキューってして、風邪みたいにクラクラするんだ」
形の良い整った眉を寄せ、心臓のあたりに両手を添える彼の姿は、恋する乙女そのものだった。俺は叫びだしそうになるのを必死に抑え、なるべく朗らかに聞く。
「へ、へえ・・・病気かな、エスナかけようか?」
「やってみたけど治らなくて・・・どうすればいいんだろう」
もしかしたら今後戦闘に役立たなくなってしまうかもしれない、と深刻そうに告げる彼は、”ソレ”の正体が分かっていないらしい。これは俺からきちんと教えてやった方が良いのだろうか。それにしたって、なぜシャドウに惹かれたのだろうか。そんな疑問が湧いて出てきたが、取り敢えず部屋を移して少し話をしようと思った。いくらなんでも、みんながいる広間で恋愛相談をするつもりはない。
「わかった、教えてやるよ。・・・ロック!ちょっと来てくれ!」
「なにー?」
「相談があるんだ、俺の部屋にきてくれ。ティナ、行くぞ」
「え?う、うん・・・」
弱々しく返事をしたティナの手を強引に引っ張り、ずんずんと部屋へ向かった。
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「まずティナ。胸がキューってして、風邪みたいにクラクラするのは病気じゃない」
そう告げると、彼はあからさまにホッとした顔をした。傍らに座るロックが目を丸くさせる。
「なあに、それ」
「・・・ティナ、よく聞けよ」
「う、うん」
生唾を飲み込む音がした。俺は重々しく告げた。
「お前は、シャドウに恋をしている」
ロックの息を飲む気配がする。どんな反応をするかと横目で見ていると、
「えーっ!」
目を剥いて驚いた。ティナはびくりと肩をすくめるが、それよりも俺の言った言葉の意味が気になったのか、恐る恐る訪ねてきた。
「恋って、その人のことを好きになるってこと・・・?」
「ああ」
「でも僕、セリスやロックのことも好きだよ」
「違うよティナ、あなたはシャドウのことを愛してるんだよ」
俺が言おうとしたことをロックが遮って言った。ティナがロックの方を見ると、ロックは腕をくんでうんうんと頷いている。やはり呼んでよかった。女性は恋だとか愛だとかに詳しい。俺では不可能な返答をしてくれるだろう。
「愛してる?」
「そう。勿論、モブリズの子供達に対する”愛すること”じゃない。異性に対する”愛”なの」
「・・・難しいな」
「これからわかればいいのよ」
そう言って太陽のような満面の笑みを浮かべる彼女は楽しそうだ。かわいい。
「シャドウのどんなところが好き?」
「え?えっと、クールだけど優しいところとか、剣の手入れとか手裏剣の手入れは上手なのに、料理はちょっと苦手なところとか・・・」
「ギャップ萌えってわけね!」
「ぎゃ、ぎゃっぷもえ・・・?」
「ようし、ロックお姉さんがティナの恋を応援したげる!ちょっと、セリス!」
「お、おう?」
突然名前を呼ばれたので奇妙な返事をしてしまった。ロックは椅子に座る俺を無理矢理立たせ、扉の方へ押しやると、
「セリスはシャドウにティナへ関心を持たせてきて」
と無茶な注文をした。反論しようとすると大きな瞳でこちらを睨んでくる。・・・いや、おそらく本人は睨んでいるつもりなのだろうが、俺からすれば上目遣いで見つめているようにしか見えない。そんなことを口に出せば彼女の機嫌を損ねるので、大人しく言う事を聞くことにした。
「わかったよ」
「じゃあよろしくね」
背後で扉の閉まる音がする。俺は重く息を吐いた。どうしたものか。
取り敢えずシャドウを見つけねば話も進まない。俺は適当に廊下を歩くことにした。と、曲がり角を進んだとき、目の前に真っ黒な影が迫っていて俺は思わず息を詰めて後ずさりした。
「っ!」
「・・・すまん」
「しゃ、シャドウか・・・」
唯一見える双眸は反省の色は見られない。この女はよく足音を消しているので、曲がり角で出会うとほとんどの人間が心臓に悪い思いをする。せめて気配は放(はな)っておいてくれといっても「こればかりはどうしようもない」と珍しく困ったような声音で言っていたことを思い出した。
しかしこれは好都合だ。俺は去ろうとするシャドウを無理矢理引き止めた。
「あー、突然なんだけど、これから用事はあるか」
「・・・何か用か?」
流石に察しが良い。俺は簡潔に要件を告げた。
「実は戦闘について相談があるんだ。お前は剣を使うだろう?」
「・・・カイエン辺りに言ったらどうだ」
「いや、それも考えたんだが、カイエンと俺たちは剣の持ち方からして違うからさ」
我ながら苦しい。剣使いならエドガーや、それこそティナだっている。態々シャドウに話を持ちかけるのは不自然だ。しかし、シャドウはそれに気付いているのかいないのか、思っていたよりもあっさりと応じた。
「悪いけど、俺の部・・・」
そこまで言いかけて、俺の部屋はいまロックとティナが使っていることを思い出した。煙たがられるかもしれないと思いつつ尋ねる。
「いや、シャドウの部屋へ行っていいかな」
「・・・いいだろう」
不気味なほど素直に頷いた彼女は、俺の脇を通り過ぎてすぐ手前のドアノブに手をかけた。案外、近くの部屋に宛てがわれていたらしい。全く覚えていなかった。きぃ、と扉が開かれる。インターセプターが真っ先に部屋に入る。と、シャドウがこちらへ振り返って言った。
「入れ」
「え?あ、うん・・・おじゃまします・・・?」
恐る恐る入ると、そのすぐ後ろからシャドウがついてくる。扉の閉まる音がした。
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