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やるしかなかった

×TOAの続き。小ネタのつもりだったのにどうしてこうなった。今回特に短い方だと思います。とりあえずチーグルとシャドウさんは絶対書きたいのでいつか続き書きます。いつか。

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あらすじ:ルークがエンゲーブの食料庫の食糧泥棒扱いされたけど勘違いだったよ!
腹が据えかねたルークはティアとシャドウを連れ立って犯人のチーグルの住む森へ殴り込みすることにしたよ!
シャドウさんは早く帰りたい気分だよ!!でも帰れません!!!

注意:前回同様、微妙に仲間厳し目要素があるけどシャドウさんが地の文で毒を吐く程度だよ!苦手な人は気をつけてね!!




絶対犯人捕まえてやる、と意気込むルークを先頭に、ティアとシャドウはその三歩ほど後ろをゆっくり歩いていた。森は近場にあるので、あまり土地感のないルークでもなんとかわかるようだ。宿で地図を確認していたのもあるだろう。

歩きながらも、ティアはしきりにシャドウを気にするような視線を送った。結局、時間がなくて靴が買えなかったのだ。当の本人は大して気にしていなかったのだが、ティア視点からすると10にも満たない幼い子供が裸足で地面を歩くというのは哀れっぽく見えるらしく、何度かルークにそれとなく買い物へ行こうと誘導していた。が、前日に必要な買い物を一人で済ませていたらしく(いつの間にやら買い物の仕方を学んでいたらしい)突っぱねられてしまったのだ。

一人で買いに行ってもよかったが、ルークを一人放置するを何をやらかすかわからない。それに自分はルークを誘拐したも同然の立場。仕方なく、シャドウには辛抱してもらうことにしたらしい。

ぺたぺたと歩きながらシャドウは、ティアの言う通り靴は必要だと感じ始めていた。子供の足は存外柔らかい。小石程度ならなんともないが、どうも割れたガラスの破片かなにかを踏んだらしく、足の裏が切れて地味にダメージを喰らう。布を巻くくらいはした方が良さそうだ。後でやろう。

歩いて十数分程経つと、視界に青々と茂る木々が見えてくる。少し開けた小道は森の入口らしく、ルークは一度振り返って自分より後ろを歩く二人を見ると「はやく!行くぞ!」と声をかけた。ティアとシャドウは同時に互いの顔を見合わせると、また正面を向いてきもち早足でルークの傍まで近づいた。

森に入ると、木々の葉に日光が遮られ、心地よい涼やかな風が吹いていた。

「おい、あれって」

ふと、ルークが声を上げた。その視線を追うと、白い法衣を着た細身の少年が蹲っている。その周囲には四足歩行で厳しい顔つきの、虎のような魔物が囲んでいた。

ティアが危ない、と呟くと同時に、イオンが動き出した。地面にへたり込んだまま片手を上げると、掌に音素の光が瞬く。その手を振り下ろして地面をつくと、またたく間に光が広がり、魔物たちを一斉に消してしまった。

攻撃性のある譜術を見るのは初めてかもしれない、とシャドウは思った。ティアの譜術はどちらかといえばサポートタイプで、その第七音素の素養もあって回復系が得意なようだ。しかしこのイオンは、魔物を一瞬で消すほどの威力を持つ譜術を扱えるらしい。やはり、魔法と少し似ていると感じた。

覚束無い足取りで立ち上がったイオンは、しかしすぐにふら、と態勢を崩してしまった。……高威力の譜術を使うほどの体力がないのだろうか。それとも、相応の代償が必要なのだろうか。

「イオン様!」

間髪いれずティアが駆け寄る。それに続いてルーク、シャドウ、とイオンに近づいた。

「おい、大丈夫か」
「だ、大丈夫です。ダアト式譜術を使いすぎただけで……」

緩慢な動きで起き上がったイオンは、三人、主にルークを見ると僅かに目を見張った。

「あなた方は、たしか昨日エンゲーブにいらした……」
「ルークだ」
「ルーク……古代イスパニア語で『聖なる焔の光』という意味ですね。いい名前です」

そんな意味があったのか。人並みにチェスを嗜むシャドウとしては、駒の名前と同じ程度にしか認識していなかった。

ルークに続いて、改まったようにティアが自己紹介をすると、イオンはまたも目を見張り、

「あなたがヴァンの妹ですか」
「はぁ!?」

とこぼした。噂は聞いています、お会いするのは初めてですねと言葉を続ける、穏やかな調子のイオンを無視してルークが口を挟んだ。

「お前が師匠の妹!?じゃあ、殺すとか殺さないとかって、あれは何だったんだよ!」

その話は初耳のような気がする、とシャドウは思った。自分に関係のないこととはいえ間近で話が拗れていく様を見るのはなんだか居心地が悪い。しかも糾弾されている当人は、本来説明するべき立場のはずなのに(なにせティアは暫定誘拐犯、ルークは被害者、イオンはティアの態度から見て彼女より上の立場である)言葉を濁している。言いづらい事情らしいことは態度でわかるが、事のあらましくらいは言っても良さそうだ。

結局、追求した本人のルークが道を横切るチーグルに意識を取られ、怒り心頭に後を追いかけていったことにより話は有耶無耶に終わった。

「あれ、君は……」
「彼はシャドウ。その、少し、迷子で…ルークと一緒に街まで送り届けなければならないんです」
「……」

特に補足の必要はなかったので、シャドウは黙り込んだままイオンに軽く頭を下げてそっぽを向いた。普段ならば不敬行為にあたるためしないが、おそらくイオンは気にとめないはずだ。実際、シャドウの思った通り、イオンは全く気にしていない様子で、「それは大変でしたね」と身を屈めて気遣わしげな視線をやったし、ティアに対しても「ヴァンのことは追求しないほうがいいですか?」と訪ねていた。明らかに言及した方がいいことなのだがそれは。色々と気になることはあるが、先にチーグルを追いかけていったルークから三人を呼ぶ声があったので、話は中途半端に終わった。

「お前らがノロノロしてっから逃げられちまった!」

唇の先を尖らせて文句を言うルークは、イオンを見て顔を顰めた。青白く血の気の引いた顔色は、獣が潜む森よりも病院のベッドにいた方が似合っているように見える。ルークは「戦えねーならこんなとこに来るんじゃねーよ」と心配しているのか、それとも本気でそう思って言っているのかわからないセリフを吐いたが、イオンはその言葉を特に重く受け止めたわけではないらしく、軽く謝ったあと「チーグルの巣はこの先にある」と言った。

何故イオンがそんなことを知っているのかというと、本人曰く、エンゲーブでの盗難事件が気になり自分なりに調べていたのだという。聖獣と呼ばれるチーグルは魔物の中でも賢く大人しいらしく、人間に害をなすこと事態がおかしいのだという。ルークは素っ気なく「魔物なんか放っておけばいいのに」と言ったが、イオンは柔らかく笑みを浮かべて真相を知りたいのだと続けた。

目的が一緒だとわかると、ルークはイオンも一緒に連れて行こうと提案した。が、当然(……なのか?)ティアが反対する。どうせ置いて行ったところで、顔に見合わず行動的なイオンは一人で勝手に着いてくるだろうとシャドウが思っていると、似たようなことをルークが言い、イオンは否定しなかった。

結局、イオンはルーク達と共にチーグルの巣へ向かうことになった。





多分この時点でイオンはルークのこと色々気付いているんですよねー。シャドウさんがほかの人と違うことにも勘づいているかもしれません。
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プロフィール

HN:
ヨーカ
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性別:
女性
自己紹介:
オインゴが嫁でシャドウが愛人です

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