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没小説供養

お久しぶりです。タイトルの通りです。近日中に香水の続きを更新できたらいいな(願望)

書きかけの夢小説(全部男主)の冒頭部分が最後の方に3本程ありますので、夢が苦手な方はご注意ください
冒頭いきなりビリクラだけどあまりいちゃいちゃしてないです



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ビリクラ(オチが決まらなかった)


ビリーとクライド、またの名を列車強盗団シャドウは、お世辞にも善人とは言い難い。銀行強盗をした回数は数知れず。一度ドマ鉄道の列車をジャックし、積荷の金貨(およそ100万ギル)を盗み出したことで、元々高額だった懸賞金に0が3つほど増えた。しかし世界警察である帝国が二人を躍起になって捕まえようとする中、彼らはどういうわけか、警察が守るべき市民に匿われ魔の手から逃れている。

そこはどう見ても空家で、人の気配は全く無く、生き物がいるとすれば陽の光を嫌うワラジムシやミミズに、迷い込んだ猫くらいだった。大きな蜘蛛の巣が部屋の隅に張り巡らされ、木の板は歩けば常にギシギシと音が鳴る。置かれた家具といったら、穴の開いたソファくらいで、なんと、そこには一人の男が長い脚を放り出して寝転がっていた。両手には新聞を持っているが、重いものでも持っているかのように力を込めているものだから新聞はくしゃくしゃになっている。

男はくすんだ黄金色の頭に薄青色のバンダナを巻いており、目を引く黒い眼帯をつけていた。唯一晒された左目はバンダナより深い青色だ。新聞の一面を左目で隅々まで見終えたビリーは、不機嫌そうに吐き捨てた。

「『ビリーとクライド またも警察の手を逃れる』『逃亡先はニケアか?』――あーあ、わかってねえなぁ。『列車強盗団シャドウ』だって言ってるのに!」

パサ、とクシャクシャになった新聞を投げ捨てる。床に落ちたそれを、クライドは埃を落とすように手のひらで数回叩いて広げた。

「列車をジャックしたのだって、あの一回きりだ。仕方ないだろう」

相棒の小さな癇癪を、言葉通り仕方ないといった風に宥めるクライドは、なるほどマダムによくモテそうなハンサムだった。枯色の頭髪はオールバックになっており、ビリーと違い晒された両目は漆黒と見まごう深緑色。顔のパーツ一つ一つが整っている上、表情に大きな変化がないため、まるで人形のような面立ちだ。

クライドのあんまりな言いように、ビリーは片眉を上げた。

「お前のそういうところが嫌いなんだ――いいか?俺たちは悪名高い、世紀の列車強盗団シャドウなんだぜ?」
「もう悪名高いビリーとクライドで名が知れているじゃないか――」
「ダッセーだろ名前がコンビ名なんて!」
「……お前のそういうところがわからない」

浅い溜息を吐いて額に手を当てたクライドに、ビリーがソファの背もたれから腕を伸ばし、彼の服の裾を引っ張った。

「…なんだ」
「んー」

少し体を動かし探り当てたのはクライドの手だった。黙って手のひらに丸い何かを握らせる。クライドが手を開くと、それは紙に包まれた飴玉だった。色は白。何味かは、…見た目や匂いでは推し量れない。クライドは訝しげに言った。

「なんだこれ」
「飴ちゃんだけど」
「……変なもの入ってないだろうな」
「ひでー。俺のこと信用してないの?」
「信頼はしてるがな」


I.bパロ(おそらく途中で飽きた)

ロック・コール。25歳独身。職業はトレジャーハンター。・・・って言うと確実に「泥棒」だろと茶化されるが、そんなことはどうでもいい。俺は今危機に立たされていた。走ってばかりで膝はガクガクだし、玉のように冷や汗が額からこぼれ落ちている。息を吐くと心臓がズキ、と痛み、目の前の女を――額縁から身を乗り出す、青い服の女を睨みつけた。

「くっそ、むしゃむしゃ食いやがってゾーンイーターかよ!!」

俺の薔薇返せ、と言う前に、意識が途切れた。



――ジドールでブランフォードという画家の展覧会が開かれるという話を聞いたのは、本当に偶然だった。いつものように酒場で友人であるジェフ(王族と自称しているが事実かどうかは知らない。しかしフィガロの現王にクリソツだ)と駄弁っていると、丁度ブランフォードの話になった。

ブランフォードというのは、美術に疎い人間ならまず知らないマイナーな画家だ。事実俺も、つい最近までは名字すら知らなかったのだ。一時期、ブランフォードの絵画を盗まれたという貴族から絵画を取り返してくれという依頼を受けたことがある。そこでブランフォードの名前を知ったのだが、美的センスが皆無な俺には理解し難かった。

ジェフは一枚のチケットを取り出すと、「ブランフォード展のチケットを貰ったんだが、行く暇がなくて。貰ってくれないか」と言った。見ると確かにブランフォード展のチケットだった。貴族のお偉いさん方が纏めて買ってしまって、もうどこでも売っていないらしい。一体誰から貰ったのだろう。

受け取ったはいいが、別の友人に押し付けるのも憚られる。結局俺はひとり寂しく、貴族に混ざって展覧会に赴いた。

会場は広く、えらく豪華な作りになっていた。外は生憎の曇天だが、そんな闇も美しいシャンデリアが明るく照らしている。白く艶々とした大理石の床が光を反射するどころか、鏡のように俺の顔も映すほどだ。ゆったりとした調子で流れる音楽はピアノだろうか。落ち着いた音色だった。

絵についてはよくわからなかった。独創的と言うべきか、なんというか。普通の風景画や静物画もあれば、奇妙な色使いや形の絵がポツンとあったり、ただのソファーかと思えば頭のない像があったりした。それを見て貴族達は「素晴らしい」だの「深みがある」だの「雰囲気がイイ」だの言っていたが、結局それも抽象的な感想でよくわからなかった。やっぱり向いていないのだろう。来なければよかったと後悔しつつ、折角なので全て見てしまおう、とフロアを移った。

進んだ先にあったのは壁一面に置かれた大きな絵だった。

「絵空事の世界・・・ね」

タイトルを読み上げて額縁の端から端まで見渡す。様々な色があって見ていて飽きない。――その時だった。部屋を明るく照らしていた電気が突然カチカチと音を立てて消えてしまったのだ。

「ん?・・・停電、か?」

一度下の階に戻った方がいいだろうか。元来た道を戻ると、その異変に気付いた。いないのだ。誰ひとりとして人間が。元々存在なんぞしていなかったかのように、俺以外の人間がごっそりと姿を消していた。


夢小説1
逃げ出した帝国兵がナルシェで忠実な剣士やってる

一人の帝国兵がいた。青年は幼い頃から帝国のために働く兵士として厳しく育てられた。青年は自分の生い立ちに一切の疑問を持たなかった。それが普通なのだから、疑問に思う方がおかしい。青年は一所懸命体を鍛えた。

青年が小さな子供から成長し、10歳前後の少年になった頃。帝国は1000年前に滅んだはずの魔導の力を復活させた。青年にとってそれはお伽噺だったが、数年も経つと機械の発達したアーマーに魔導の力が導入され、さらにそれを操る立場になり、青年は漸く魔導の話を信じた。

魔導アーマーに乗った青年は無敵だった。他の仲間たちよりも迅速に、生き物も建物も嬲り殺した。それが青年の正義だった。帝国に仕えることこそが青年の正義だった。

いつしか青年は将軍という称号をもらった。青年が20歳の時の話だった。そのあまりの若さに周囲は反発したが、ガストラ皇帝直々にそれを宥めた。青年は有頂天になっていた。称号の高さと、ガストラ皇帝が自身に味方してくれたという事実が青年を勇気づけた。

そんなある日だ。

青年は、幼い子供のように無邪気なその人に会った。あまりに濃度な香水と、やりすぎだと顔を顰めたくなる化粧、目に痛い極彩色の服装。よく知っていた。同僚が嫌っていたガストラ皇帝のお気に入り。

「人工魔道士を作っているんだ、一緒に見るかい?」

社交辞令だった。適当に覗いて適当な時間に去ろうとした。連れて行かれたその先は、幼い金髪の少女が大量のチューブに繋がれ、苦しそうに眉根を寄せて実験に耐える姿だった。無邪気なその人は低いのか高いのか、裏返っているのか掠れているのかわからない、けれど酷く不快な哄笑を響かせると、青年に言った。

「お前もやるんだよ」

青年は逃げた。

山を越え密航し、また山を越えて川を渡り、そうして肉体的にも精神的にも疲弊しながらたどり着いたのが雪の降り積もる国――ナルシェ。ナルシェで力尽きた俺が目覚めた時、一番最初に見たのはツルハシとトロッコだった。よくよく見てみると、まだ採掘途中の炭坑だということがわかる。手足は鎖で縛られ不自由になっていた。当然だ、帝国兵の格好をしているのだから。ナルシェの民は手練の者が多いが、帝国にも帝国に反する者にもつかない中立国。だからこそ、帝国にも帝国を反する者にも警戒している。

暫く寒さで身を捩っていたが、無駄だということに気づきやめた。あまりゴソゴソしていると変に怪しまれてしまうかもしれない。こちらに攻撃の意思がないことをナルシェの民に理解してもらわないといけないのだ。俺には居場所がないのだから。

「目が覚めたのか」

遠くで男の声がした。低い嗄れ声に、顔を上げる(と言っても、帝国の兜がずれてまともに見えなかったが)。初老の男はどこかで見たことがあるような気がしたが、思い出せなかった。その隣に立つのは若い男だ。厚い防寒着にマスケット銃を背負っている事から、ナルシェの兵か何かなのだろう。

「わしはこのナルシェの長老じゃ」
「長老、やはり危険です…」
「なに、たかが帝国兵じゃ。この鎖を解くことはできん」

俺の顔があまり知られていないことに内心でホッと安堵していた。魔導アーマーに乗る際は、顔を見られたくないため下級兵士と同じ格好をしていたのだ。咎められたりしないこそすれ、沢山の訝しげな視線を食らったのは思い出したくない過去である。

「して、お主は何故このナルシェに来たのじゃ」
「……どうせ短い命だ、洗いざらい話そう」

わざと、そのような言い方をした。

「俺は確かに帝国兵だ。…しかし、ある魔導実験を見てしまった。最低だ、あんな……あんなこと、人間にやるべきじゃあない…幼い頃から忠誠を誓った帝国から生まれて初めて逃げた…俺はなんとか海を渡って、この身一つで大陸を歩いてここにたどり着いたのさ」

ふ、と吐息混じりに言葉を切る。若い男は唾を飛ばして言った。

「嘘をついているんじゃあないだろうな!他に仲間を待ち伏せておいて信号を――」
「いいや、この青年に嘘はない」
「なっ・・・そんな、長老!お言葉ですがこの男は信用なりません!」
「お主の言葉をわしは鵜呑みにしよう。そしてわしはお主を匿おう」

長老はそう言うと元々低い腰をさらにかがめ、倒れ伏す俺の兜を外し、視線を合わせた。寂しげな細い瞳が印象的だった。

「その代わり、お主にはこのナルシェで剣闘士として働いてもらおう。勿論裏切り者は」
「裏切ったりなんかしないさ…爺さん、いいや、長老さん。あなたは俺の正体に気付いている。だからこそ今すぐ殺さずナルシェに味方するようにしている」

俺は笑みを浮かべた。

「遠回しに言わなくても、俺は癒しを求めてここに来たんだ」

ナルシェのためならなんでもすると、ここに誓おう。膝に置かれた長老の皺だらけの手にキスを落とした。



「フィガロの王に、リターナーの指導者バナンか」

氷のように表情の変わらない青年は、エドガーの朗らかな挨拶もそのままに蔑むように呟いた。それから視線をティナの方に移し、両の目を細める。口角を引き攣らせて固まったエドガーを下がらせ、年上らしく平然とした態度でバナンが言った。

「君はナルシェの剣闘士じゃな」
「…けんとうし?」

ティナが単語に心当たりがないのか、不思議そうに小首を傾げた。ジュンが警戒するように青年を見る。

「元帝国兵でありながらナルシェに味方する剣士…噂はかねがね聞いておった」
「…何か用だろうか。生憎だが、危険人物をこの家に入れるわけにはいかない」

青年の言葉に、ティナはびくりと肩を竦める。危険人物というのは、自分のことだ。このナルシェを襲ったのは自分だ。元々あった罪悪感が膨らみ、ティナは俯いて黙り込んだ。ジュンが慰めるようにティナの細い肩に手を置く。

「なに?危険人物じゃと?」

バナンは片眉を上げると、次の瞬間ライオンの咆哮を思わせる盛大な笑い声を響かせた。暫く笑うと、笑いの余韻を残した表情のまま続ける。

「リターナーの指導者バナン、フィガロ王のエドガー、リターナーにジュンとティナ。――危険な人間などどこにもおらんじゃろう」
「……少し待っていろ」

青年は家の扉を一度閉め、またすぐに顔を出した。黙ったまま顔を俯かせるティナの前に立つと訝しげなエドガーも無視して腰をかがめる。

「あ、おい…」
「すまなかった、お前の話は聞いていた。疑ったわけではない」
「私に、言っているの?」

顔を上げるティナに青年は頷く。

――冷静沈着な元帝国兵。彼の剣さばきに敵う者は、果たしてこの世に何人いるのか…。

「俺の名はスパルタクス。元帝国兵…その点では、お前と似ている。よろしく頼む」

青年、否スパルタクスは右手を差し出した。それに対してティナは、右手を差し出すでもなく拒絶するでもなく、ただ一言。

「私、お前じゃなくてティナよ」

スパルタクスは面食らったように目を丸くさせた。そして、ほんの少しだけ口角を持ち上げると、

「よろしく頼む、ティナ」
「こちらこそ…スパルタクス」

今度こそティナはスパルタクスの握手に応じた。



「大体の話はわかった。しかしじゃ……わしらに血を流せというのか…?」

顔をしかめて苦々しく言う長老に、ジュンが間髪いれず「そうは言っておらん」とフォローを入れる。が、そのフォローも無碍にしてバナンが豪快に笑った。

「ハッハッハ!その通り!」
「バナン!」

ジュンの咎める声を無視し言葉を続ける。

「わしらは、あんたに血を流せと言っておる。ガストラ帝国はさらに魔導の力を得るために動き出している。この都市で見つかった氷づけの幻獣を狙ったのもそのため……このまま帝国が魔導の力を増大させていけば、過去のあやまちを繰り返すことになる……」
「……」

誰かが重く息を吐く音がした。ティナが失礼にならない程度に視線を這わせると、ため息の正体はスパルタクスだった。先ほどの友好的な態度とは打って変わって、嫌いなものを無理矢理口に突っ込まれる子供のような顔をしている。

「魔大戦……」
「…世界を破壊尽くした伝説の戦い…か…」
「人間はもっと、知恵のある生き物じゃなかったのか……」

その時だった。荒々しく扉を開く音と、何者かが家に駆け込んでくる音が響いた。

「兄貴!」

身長190はあろうかという巨躯を持った男が、のっしのっしと入ってくる。それを見てエドガーが目を輝かせた。

「マッシュ!無事だったか!!」
「おう」

マッシュがはにかんで頷いた。


夢小説2
仲間に吟遊詩人がいてもいいじゃない(役に立ちそうにない)


エドガー、ロック、ティナの三人はコルツ山でエドガーの双子の弟だというマッシュを連れ立って、サウスフィガロに赴いていた。活気づいた町並みに、ティナが興味深げに辺りを見渡す。それまで先頭を歩いていたエドガーが振り向き、目前の宿を親指で差して言った。

「あまり急いても仕方ない。今日はこの町の宿に泊まろう」
「そうだな」

ロックとマッシュも頷く。空は既に、燃えるような赤から橙色に染まりつつある。じきに薄暗くなるのは明白だった。

「俺が部屋とってくるよ。エドガー」
「ああ、わかっている」
「? 何の話だよ、兄貴」

二人だけで話を簡潔させている様子に、マッシュが訝しげな表情をする。同じようにティナも小首をかしげた。すると、エドガーはニヤッと笑みを浮かべ、「聞こえないか?あの歌声が」と囁く。そこでマッシュも得心したのか、間の抜けた声を出した。

ティナは自分よりも背が高い男たちをぐるりと見上げ、それから不思議そうに「なに?歌声がなにかあるの?」と尋ねる。マッシュはティナの頭をポンポンと優しく撫でると晴れやかな笑顔でこう言った。

「ティナも会いに行こうか、きっと仲良くなれるぜ」
「ロック、頼んだぞ。部屋の数を間違えるなよ」
「どんだけ信用ないんだよっ!」

ロックはそれだけ言うと、ティナに手を振って宿の扉を開けていった。

「さ、行こうか」

エドガーがさり気なくティナの腰に手を当ててエスコートしたが、マッシュはそれに苦笑するだけに留めた。兄の癖を一番よく知っているのは彼である。ただ、折角のエスコートもティナからすれば謎の行動に過ぎなかったが。



深緑色のキャスケットを目深(まぶか)に被り、赤いポンチョと薄紫色のスカーフを腰に巻いた長身の男が、広場に腰をかけハープを弾いていた。無骨で大きな手が鳴らす音は、信じられないほどに繊細で、春の木漏れ日のように穏やかな音色を響かせている。男の小さな、しかし圧倒的に存在感を放つ低い歌声が、ギャラリーの胸を打った。

男はしがない吟遊詩人で、旅人である。決まった家を持たず、決まった職を持たない。時折立ち寄った町でハープを弾き、それに乗せて歌う。それだけで彼は生活をしていた。常人ならば中々できないが、男の持つ美声とハープの音色がそれを可能にさせた。

ハープの最後の音を鳴らし、音の余韻が終わると、ギャラリーのはち切れんばかりの拍手と歓声が上がり、金貨の雨が降る。男はギャラリー一人一人の感想を丁寧に返し、手を振った。やがて広場に人がいなくなると、男の手元には革袋いっぱいの金貨や銀貨が残った。

ふぅ、と息を吐くと、男に近づく3つの影があり、男はニンマリと笑みを浮かべ片手を上げる。

「よぉ、エドガー」

――その唇が紡ぐ音楽は救いか、それとも滅びの意味を持つのか。それは本人しかわからない。男の名前をリヌスと言う。リヌスはティナを見ると笑顔のまま言った。

「知らないお嬢さんがいるな」
「おい、リヌス」
「わかっているさ、マッシュ。大きくなったな」

まるで久しぶりに会った親戚のおじさんのような物言いに、マッシュは照れ笑いのまま頭をガシガシとかいた。

「でも、リヌスには勝てねえな」

確かに、マッシュよりリヌスの方が上背がある。とは言っても数センチの差だろうが、この中で唯一の女性で、当然のように背も低いティナは少々威圧感を感じた。エドガーがティナの肩に手を置き紹介した。

「こちらはティナだ。積もる話は宿で」
「ティナか。良い名前だな。俺はリヌス。よろしく」
「・・・よろしく」

些か素っ気ない態度にリヌスは少し黙り込み、マッシュに小声で「俺何かしたかな?」と聞いた。マッシュはそれに「背が高いから怖がられたんじゃないの?リヌスは目元も見えないし」と返す。リヌスはしばし考えて、キャスケットを取った。それから長い前髪をかきあげ、腰をかがめてティナと視線を合わせる。

「怖がらせたらごめん。よろしくな」
「・・・私こそ、ごめんなさい。緊張していたの。その・・・男の人ばかりだから」

細く形の整った眉を顰め、淡々とした声音の中には戸惑いが込められていた。しかしそんな戸惑いもすぐに消え、「リヌスの眼ってとっても綺麗ね」と真摯に答える。リヌスはそれに対して曖昧な笑みを浮かべ、「ティナも綺麗な髪と眼を持っているな」と頷いた。かきあげた前髪を戻し、キャスケットを目深に被る。

「さ、宿へ」

エドガーが先頭に立ってそう言った。


夢小説3
機械兵(元人間)がシャドウになつく

キリキリキリキリと。歯車が音を立てて鳴り。ガタガタガタガタと。大きな足で大地を歩き。初動こそ問題は見られなかったそれは、あっという間に大の男たちを飲み込んでしまうほどに恐ろしいパワーを持っていた。



使い古しのテント内に運ばれた木製の椅子に座る男を、兵士たちが気味悪そうに見遣った。飴色の癖毛に鮮やかなグリーンの瞳。少し高い鼻と薄い唇……一見して端正な面立ちの好青年と言えるが、問題はそこではない。

右腕は魔導エネルギーを注入したロケット砲(取り外し可能)、左腕には成人男性一人分はあろうかという巨大な棍棒。腹部には魔導アーマー同様に帝国の刻印がされたベルトを巻き、黒い革ズボンの上からでもわかる程、両足からは機械じみたネジやバネが盛り上がっている。

いかにも『機械人間』といった風貌だが、それよりも不似合いなのは額にハメられた美しい銀細工の輪であった。女性が着飾る際ドレスと合わせて付けるのならば問題はなさそうだが、上背の高い大男が如何にも繊細そうな輪をつけているのは、些か奇妙だった。しかし、必要なのだ。一人の兵士が声を潜めて言った。

「あの野郎、身動き一つしないぞ…」
「当たり前だ、『操りの輪』をつけてるんだから…」

『操りの輪』。とある魔道士が玩具と称して一人の少女に使用した。その名の通り、着用者を意のままに操ることのできるものだ。飾りだなんてとんでもない、それは存在してはならないものだった。

「へ、そりゃそうだ。勝手に動いたりなんかしたら、」

大問題だ、と兵士が続けようとした瞬間、男が突然立ち上がった。それはもう、車のエンジン音が聞こえなかったのが不思議なくらい素早く。兵士たち二人は驚愕に肩をすくめる。男は無機質な瞳で兵士たちを見つめている。気味悪がった兵士が口を開く前に、男が言った。

「午後4時30分20秒――作戦会議の時間です」
「あ、ああ。そうだったな」
「お二人は行かないのですか?」
「俺たちは見張りだから行かねえよ…会議はお前や将軍サマだけだ」
「そうですか」

男はわかっているのかわかっていないのか、非常に汲み取りづらい表情で頷くと、機械音を響かせながらテントを出て行った。機械音が遠ざかって行くと、兵士たちは顔を見合わせてしかめっ面を作り、言った。

「タイマーみてえだ」
「目覚まし時計?」
「目覚めるどころか永遠の眠りについちまう」
「そうだな、なってったって」
「帝国が誇る人造機械兵だからな!」



帝国の人造機械兵と言えば一人(一体?)しかいない。ソレは『マキナ』という名前を持っているが、その名で呼ぶ者は少なかった。なにせ『機械人間』だの『人造機械兵』だの、下手すれば『アレ』や『ソレ』という呼称で事足りるからだ。もしかすると、名前がないと考えている兵もいるかもしれない。とにかく、彼の名前は軍内ではあまり広まっていなかった。

その事実が覆されるのはそう遠くない未来だったらしい。

帝国軍基地に侵入者が入り、さらには会議に参加していたレオ将軍が皇帝の支持により離脱、同じく参加はしていたが詰まらなそうに椅子に足を引っ掛けていた魔道士ケフカはマキナが目を離したすきに何処へと消えてしまった。

侵入者はかなりの手練らしく、マキナが駆けつけた頃には侵入者を排除しようと向かった兵士のほとんどが地面に伏している。命令はされていないが危機を感じ取ったマキナは戦闘に参加――しようとした。得意の棍棒を構え、ロケット砲から小型魔導ミサイルの発射(一部の魔導アーマーにのみ装填されている!)まで完璧に準備していたのだ。

それが。

「ゥゥーーッワンワンッ!」
「!! インターセプター!」

一匹の犬によって叶わぬものとなった。

頭に噛み付こうとしたらしい、ドーベルマン(それともシェパードだろうか?)の牙が銀細工の輪に引っかかり、元々ガタがきていたのか素材が脆かったのか、『操りの輪』は呆気無く砕け散ってしまった。急に精神操作の圧力が外された反動だろうか、一瞬意識を飛ばしかける。急激に睡眠欲が湧いてきたのだ。頭を振って無理矢理脳を起こす。誰かが喋るような声が遠いどこかで聞こえるが、それが何を意味しているのか理解ができなかった。

波打つような激痛に耐えかね米神を抑えて地面に蹲っていると、三体の魔導アーマーが動き出す音が、話し声同様微かに聞こえた。

マキナは陸に上がった魚のような勢いで顔を上げ、吠えるように叫んだ。

「待ってくれ!」

土が抉れる。魔導アーマーは素晴らしい能力を持つが、その分途轍もなく重い。

「俺も連れて行ってくれ!!」

口の端から漏れ出したのは血ではなく粘着質なオイルで、乾いた地面に染み広がることなく油が落ちていった。魔導アーマーに乗っている一人の男――かなり筋肉質だと言える。格闘家かモンク僧だろうか――が困惑気味に言った。

「なんか、さっきと様子が違うぜ。どうする、カイエン、シャドウ」
「ううむ、何やら訳ありの様子でござるが……」

髪を一本に纏めた壮年の男もまた、困惑気味に言う。その瞳には動揺と少しの憤怒が映っている。言葉を濁す言い回しからして、あまり関わりたくないのだろう。筋肉質な男もそうだ。何やら面倒なことになったぞ。口には出さないが目がそう語っている。マキナはその様子を見て焦燥感に駆られ、出た言葉を乱雑に口にした。

「俺は帝国が嫌いだ!だから、そう!ここを出ていきたい、のだと思う!その、今までしたきた『何か』を帳消しにするつもりはないんだけど!あの、俺、敵じゃないから!だから!!」

真実に言いたいことが喉の奥に引っかかって出てこない。マキナは自分の言語能力に歯噛みしながら上体を起こした。機械と生身の密接部分が酷く痛んだのだが、それを気にする暇はなかった。背後から新たに兵士たちが追ってくるのがわかる。そう、帝国兵が装備している鎧の足音が――鎧の関節部不愉快にガチャガチャと音を鳴らしているのが――マキナの耳にははっきりと聞き取れたのだ。

「信じてもらえるまで、俺はアンタたちの護衛をする!」
「お、おい、お前!」
「俺はマキナ!帝国の人造機械兵!」

右腕のロケット砲を構える。移動に邪魔だったため倒されていた照準器が起き上がり、大きな経口には六つの弾丸が収まっている。マキナの傍に先ほどの犬が駆け寄ってきたが、そんな事はお構いなしに迫り来る帝国兵に向かって魔導ミサイルを発射した。一瞬真っ赤な閃光が視界いっぱいに広がったが、何故か、不思議な暖かさを秘めた弾丸だった。



「あの、ありがとう」

魔導ミサイルは使用者の魔力を存分に使う。それを忘れていたマキナは、発射後にエネルギー切れで倒れてしまった。倒された兵士の後からやってきた兵士に襲われかけたところを、先程から沈黙を守っている黒づくめの男――シャドウが助けたのだ。

「………」

徹底して無口である。マキナの操りの輪を砕いた犬、インターセプターがシャドウの言葉を代弁するように一度吠えた。

「しかし、マキナ殿の言う『操りの輪』、……恐ろしいでござるな」
「多分、ティナと同じように操られていたんだろう。それをインターセプターが取ったから…」
「ワン!」
「あ、あわわ、なんだよ、噛むなって、いたたたたた…!」

筋肉質な男、マッシュ(どうやらモンク僧らしい)の手に噛み付くインターセプターは、どうやら甘噛みとかではないらしく、力技で漸くインターセプターを引き剥がしたマッシュは苦々しげに噛まれた腕を見た。歯型がくっきりしていて、血まで出ている。

「大丈夫か?ケアルしようか」
「いや、大丈夫」
「けあるとはなんでござろうか?」

壮年の男、カイエンが舌足らずに訪ねてくる。マキナは少し考えて、最適な言葉を弾き出した。

「回復魔法のこと。ポーションが勝手に出てくるみたいなものだよ」
「ほう、それは便利な………ま、魔法!?」
「うん。さっき出したミサイルも魔導の力を使っているんだ」
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プロフィール

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ヨーカ
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オインゴが嫁でシャドウが愛人です

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